群落の形成

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植物はその地域における大気、水、土壌、生物など多くの自然的な環境要因、さらに人為的な環境に対する制約の中で、それに見合った多くの種類がお互いに競争し、影響しあいながら、その場所に適応した集団、すなわち植物群落(群落)を形成している。
 植物群落は大きく分けると自然群落と代償群落とに分けることができる。自然群落は自然環境要因、たとえば気候、地形、土壌、生物などの影響のもとで、それに適応した植物が環境と働き合って成り立っている群落で、そのような群落を総称して自然植生という。多摩丘陵においては古い時代から何らかの形で人為的な干渉を受けてきたために、本来の自然植生といえる群落はほとんど見当たらないが、極めて近い内容を持った群落としては、古い神社仏閣の境内に残るシイ・カシ林がこれに当たる。
 代償群落は自然群落に人手が加えられた結果かわって成立した群落で、二次群落ともいう。またそれらを総称して代償植生または二次植生という。多摩丘陵に多く見られるクヌギやコナラの雑木林は、自然植生に人手が加えられ、十数年ごとに伐採が繰り返されて成立した代償植生の一つである。
 植物群落は気温や降水量といった気候条件によって第一義的に規制される。吉良竜夫(一九七一)は植物気候帯を示す指数として温量指数を提起されているが、そのうち暖かさの指数八五度のラインがカシ類などの常緑広葉樹林の生育しうる暖温帯林域と、ブナなどの落葉広葉樹林の生育しうる冷温帯林域との境界にあたることを報告している。暖かさの指数とは、植物の生理作用に基づき、月平均五度Cを規準としてこれを越える気温積算値をいい、五度C以下の積算値を寒さの指数という。
 多摩市の昭和五十一年(一九七六)から六十年(一九八五)にかけての一〇年間の月平均気温から、多摩市の暖かさの指数を試算すると一三七、六度Cであることから、気候的には暖温帯林である常緑広葉樹林の成立領域であることを示している。しかしながら、現在の多摩市は強い人為的な干渉を受けた結果として、暖温帯の極相(クライマックス)を示す常緑広葉樹林はきわめて乏しい。