水田に生える雑草

147 ~ 148
水田は稲作文化が日本に伝播して以来、技術的変化はあったものの、長い年月にわたって恒常的に栽培管理が施されてきたため、水田の管理に適応した雑草群落が成立して今日に至っている。多摩市における夏季水田雑草群落はウリカワ・コナギ群集に含まれる。群集の標徴種、識別種はウリカワ、イボクサ、コナギで、このほかイヌビエ、キカシグサ、オモダカ、チョウジタデ、アゼナなどが主な構成種である。水を落とした収穫期から翌年の春にかけては、秋に発芽して初夏までに結実をする越年生草本群落のノミノフスマ・ケキツネノボタン群集が成立する。この群集には標徴種であるノミノフスマ、ケキツネノボタン、タビラコなどのほか、カズノコグサ、スズメノテッポウ、タネツケバナ、ゲンゲ、コオニタビラコ、キツネアザミなどが高い常在度で出現する。
 しかし、現在ではこのような水田耕作地はほとんど姿を消し、ごくわずか住宅地に囲まれた中に存在するのみとなっている。したがって出現種も不揃いのことが多い。
 夏季の水田の水面上にはウキクサ・アオウキクサ群落が成立する。この群落は窒素分を多く含む水面に成立する群落で、水田と連結する用水路や、ときに多摩川本流のよどみなどにも繁茂している。かつて谷戸の水田にはサンショウモの浮遊する姿が見られたが、現在ではまったく姿を消し、ウキクサとアオウキクサのみの群落となっている。