多様な植物相

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植物は長い進化の過程で多様な環境要因と関わり合いながら生活し、それに見合った形態や生活様式を身につけてきた。とくに日本は島国(大陸島)であり、しかも南北に細長く、亜熱帯から亜寒帯までの気候帯に入る。また火山国でもあることから、じつに多様な形態や生活様式をもった植物が多い。
 植物の分布は、それぞれの地域の位置や地形、気候条件などが類似する場合、外見上似かよった群落となったり、植物の形態や生活様式にも類似したところが多い。地球全体からみれば、赤道を中心に南北両半球で、極に向かうにしたがって気温が低下し、夏と冬での昼夜の時間差や温度差が激しくなる。このため植生も連続的に変化し、熱帯降雨林から常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、針葉樹林へと移行する。このような植生帯の移り変わりを水平分布という。また、標高が変化すれば、それに伴って植生も海岸から平地、山地、高山帯の植生へと変化する。このような垂直方向での植生帯の移り変わりを垂直分布という。
 植物の形態や生活様式においても、たとえば高山帯の植物のほとんどは背が低く、矮小化(わいしょうか)し、葉は厚く、表面に光沢があるか、または密毛におおわれ、根は深いといった類似性をもつ。
 さらに、日本列島の成立にいたる地史的な要因もあって、植物の種類はじつに豊富であり、しかも地域的に変化が多く、単純に水平、垂直分布だけでは説明できない。
 多摩市に自生する植物も、広い視点からみれば、暖温帯の常緑広葉樹林帯(ヤブツバキ群綱域)に入り、極相群落はスダジイやシラカシなどの常緑広葉樹からなる林になるが、個々の植物のなかには、日本列島の地史にかかわって適応分化したと考えられる植物種も見ることができる。
 とくにフォッサ・マグナ要素(富士箱根要素)といわれる第三紀中ごろの富士火山帯における火山活動にともなって火山灰の堆積した地域には、周辺から侵入して適応分化したと考えられるこの地域特有の植物群があり、多摩市もその周緑部にあたることから、それらの植物の数種を見ることができる。