山野の湿った草原、湿原、湿地などに生える多年草。葉は剣状で長さ六〇センチメートルほどになり、幅約一センチメートル、太い中脈が目立つ。花期は六~七月。高さ八〇センチメートルほどの花茎の先端に数個の苞(ほう)があり、その中から数個の花を次々に開く。花は赤紫色で直径一〇センチメートルほど、外花被片は楕円形で先が垂れ、中央から基部の爪にかけて黄色い。内花被片は狭い楕円形で直立する。観賞用のハナショウブの原種で、かつては多摩地域の丘陵の谷戸の湿地によく見られたが、現在では自生地のほとんどが消滅してしまっている。多摩市の場合も同様で、移植保護されているものがあるのみである(図2―41)。
図2―41 ノハナショウブ