多摩市域でこれまで野外で記録された鳥類は、一八目・五二科・二〇九種であるが、国外からの移入種・野生化した飼鳥・籠抜け鳥などの人為的な七種(クロトキ・コジュケイ・ドバト・セキセイインコ・ワカケホンセイインコ・ベニスズメ・ヘキチョウ)を差し引くと、本来の野生鳥類は、一七目・四九科・二〇二種である。この数字は、本州産鳥類(四五六種)の約四四パーセント、東京都産(島と海域の鳥を除いた三三二種)の約六一パーセントにあたる。多摩市の野鳥二〇二種を、主な生息環境によって分類すると、市街地の鳥が五種(二・五パーセント)、草地や耕地の鳥が二四種(一二パーセント)、丘陵の林地の鳥が八一種(四〇パーセント)、多摩川などの水辺の鳥が八九種(四四パーセント)、アマツバメのように上空を通過するだけの鳥が三種(一・五パーセント)であって、水辺の鳥の占める比率の高い点が多摩市の鳥相の特徴であるといえよう。さらに、多摩市を基準とした野鳥の移動様式(渡り)によって分類してみると、スズメのように市域で周年見られる留鳥(四六種)が二三パーセント、ツバメのように春から初夏に南方から渡来して繁殖する夏鳥(二四種)が一二パーセント、ツグミのように秋に北国から渡来して越冬する冬鳥(七二種)が三六パーセント、キアシシギのように春と秋の移動の途中に立ち寄る旅鳥(四五種)が二二パーセント、オオミズナギドリ・コシジロウミツバメ・アカコッコ・コホオアカなど、海洋・離島・国外などから多摩市域に迷って来た迷鳥(一五種)が七パーセントであって、多摩市は冬鳥および旅鳥それぞれの越冬地・中継地として、重要な役割を果たしているといえよう。市域でこれまでに記録された二〇九種の鳥類のすべてが、現在いつでも見られる訳ではなく、今回の調査期間中(平成七年四月~十月)に、筆者が実地に確認できた種類数は七八種で、全記録種の三七パーセントにすぎなかった。