東京都環境保全局による大栗川の報恩橋下流(多摩川合流点)での調査結果を見ると、昭和五十八年(一九八三)~平成五年(一九九三)までの期間に、この水域で記録された魚種は次のとおりであった。タモロコ・ニゴイ・モツゴ・ウグイ・アブラハヤ・オイカワ・キンブナ・ギンブナ・ゲンゴロウブナ・コイ・ドジョウ・シマドジョウ・ホトケドジョウ・ナマズ・ヨシノボリ。以上の一五種の中で、毎年記録されたオイカワ(俗称やまべ)・ギンブナ(俗称まぶな)・コイと、一年を除き毎年記録されたタモロコ・モツゴ(俗称くちぼそ)・キンブナを加えた六種が、多摩市域の多摩川では最も普通の魚といえよう。報告例は少ないが、市域の公園の池などで普通に見かけるヨシノボリは、全長五センチメートル前後のハゼの仲間で、腹部の鰭(ひれ)が吸盤状になっていて、水中の石の表面などに体を密着させている。多摩市域の水系に分布しているのは、橙色型のトウヨシノボリで、ルーペ(拡大鏡)で観察すると、体の鱗の小点模様、胸びれや尾びれの条、顔にある目先の条や頬の細点などがそれぞれ美しいオレンジ赤色である。多摩中央公園の人工池に生息しているヨシノボリは、人為的に放流された訳ではなく、コイなどに混入して運ばれたか、あるいは、泥底に産み着けられた卵が、カルガモなどの水鳥に付着して運ばれて来たものであろう。
図3―16 モツゴ
「くちぼそ」の俗称で知られる代表的雑魚