姿を消した魚

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姿を消した魚の代表的なものは多摩川の天然アユである。鎌倉時代の和歌にも見えるとおり、多摩川のアユは昔から有名であったが、昭和三十年代を境に、加速的に進行した水質汚染と人工堰に阻まれて、遡上しなくなってしまった。多摩市域の多摩川で現在見られるものは養殖アユである。かつて、ギバチ・カジカ・メダカなどは、児童の川遊びの格好の対象であったが、天然アユと同様に、昭和三十年代を境にして次第に消滅していった。ギバチは口ひげがあって、ナマズに似たところもあるが、背鰭(せびれ)の数は二つで、ひげの数は八本ある。日本特産種で、かつては多摩川中流域でも普通に見られ、「げばち」の俗称で親しまれていた。カジカも、かつては多摩川の清流のイメージを代表する魚種の一つで、児童のヤス突きの対象として親しまれていたが、水質汚染に弱いギバチなどと共に消滅したらしい。メダカは、小川に棲む魚の代表的な存在であったが、水路の改修や農薬汚染が原因で、ほとんど消滅してしまったようである。昭和六十三年(一九八八)に、埼玉県から種魚二〇〇尾が大栗川へ実験放流され、メダカの復活が図られたが、その翌年の調査では確認されなかった(磯村康博による)。