図3―17 ゲンゴロウブナ
「へらぶな」の名で愛される釣りの対象魚
日本国外から多摩市域に移入された外来魚は、次の四種類である。中国大陸原産のタイリクバラタナゴは、昭和十七年(一九四二)に、ハクレンなどに混入して日本に来たのが最初である。その後も、たびたび移入されたハクレンやソウギョなどに混入して、日本各地に放流されて分布を拡大した。日本在来種とは互いに亜種関係で、ニッポンバラタナゴの分布する西日本では、交雑や交替が起きているらしい。多摩川では、昭和四十八年に、関戸堰下で捕獲記録がある。オオクチバスは、ブラックバスの呼び名の方が一般的で、大正時代末期(一九二五)に、原産地の北アメリカから、箱根芦ノ湖に初めて移入された。多摩市域では、中沢池に放流されて定着している。この魚は、擬餌を用いたルアー釣りの対象として適しているが、食性は肉食性で、他の魚種を捕食するので、日本在来魚への影響が懸念されている。しかし、その魚肉の味は淡泊で、成人病に有効なタウリンを多量に含有しているといわれる。北アメリカ原産のブルーギルは、その名のとおり、鰓(えら)の後端にある青黒色の斑紋が特徴で、昭和三十五年(一九六〇)に、農水省淡水区水産研究所に初めて移入された後、静岡県一碧湖へ試験放流された。食性は、小魚・魚卵・プランクトンなど巾広くて順応性があり、その後、各地へ放流されて定着している。多摩市域では、今回、中沢池で生息を確認した(平成七年七月十一日)。ナイルテラピアは、チカダイ・イズミダイなどの別名で呼ばれるとおり、食用魚として、昭和三十七年(一九六二)に、アフリカから初めて日本に移入された。市域では、昭和五十三年(一九七八)に関戸橋上流で記録されている。
参考文献
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