チョウの仲間

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まずチョウについてであるが、これまで確認できた多摩市内外の調査では約七〇種を記録している。そのうちよく見られる種と特徴的な種を中心に、ごく簡単に紹介したい。アゲハ類ではナミアゲハのほかキアゲハ、クロアゲハ、カラスアゲハ、アオスジアゲハなどが見られる。特徴的な種としてはオナガアゲハが数少ないながら、林がまとまって残された場所で記録されている。シロチョウ類ではモンシロチョウ、スジグロシロチョウ、キチョウ、モンキチョウが各地で普通に見られ、ツマキチョウもやや普通に産する。前述のチョウたちが春から秋までに何世代か繰り返すのに対し、ツマキチョウは春にだけ出現する年一化性のチョウである。また、数少ないながらもツマグロキチョウの記録もある。次にマダラチョウ類であるが、アサギマダラが市内では旧多摩聖蹟記念館付近で夏季に記録されている。テングチョウは市内では見る機会が少ないが、周辺の雑木林にはかなり普通に見られる。ジャノメチョウ類ではヒメウラナミジャノメが最も普遍的に市内の各所に産する(図3―18)。どちらかというと陰湿な場所を好むが、明るい草原にいることも少なくない。ほかにヒカゲチョウ、クロヒカゲ、サトキマダラヒカゲ、ヒメジャノメ、コジャノメも普通に見られる。タテハチョウ類では、ゴマダラチョウが数少ないながら、毎年姿を見せるし、多摩市周辺の雑木林の一部に生息するオオムラサキに出会うことも稀にある。ほかにイチモンジチョウ、コミスジ、キタテハ、ルリタテハが普通に見られ、ヒメアカタテハ、アカタテハ、ミドリヒョウモンなどもやや普通に見られる。ヒオドシチョウ、スミナガシ、メスグロヒョウモンなどの記録もあるが、最近では見かける機会はほとんどない。シジミチョウ類ではベニシジミ、ヤマトシジミ、ルリシジミが最も普通に見られる。珍しい種としては、ミズイロオナガシジミが永山で記録されている。市周辺の雑木林にはアカシジミ、ウラナミアカシジミ、オオミドリシジミ、ゴイシシジミも生息しているので、市内に飛来する可能性は十分あるといえる。ウラギンシジミは、市内各地でやや普通に見られる。成虫で冬を越すが、冬の間は常緑樹の葉の隙間などに潜り込んでじっとしている(図3―19)。ムラサキシジミも同様の暮しをしている。最後にセセリチョウ類であるが、イチモンジセセリが最も普通種で、オオチャバネセセリ、キマダラセセリ、ダイミョウセセリもかなり普通に見られる。ミヤマセセリは産地が限られるが、毎年春に姿を見かける。特徴的な種としては、市内近辺では、多摩川の河川敷だけに限って生息しているギンイチモンジセセリが挙げられる(口絵)。春と秋の二回の発生が記録されている。

図3―18 ヒメウラナミジャノメ
(多摩丘陵 昭和53年7月23日)


図3―19 枯葉につかまって成虫越冬するウラギンシジミ(多摩丘陵 11月18日)