フサヤガは、数多いヤガ科のガの一種であるが、止まり方に特徴がある。はねを開き、腹部を強く背中側にそらせて静止するのである(図3―22)。夏の初めと秋口の二回成虫の姿を見ることができる。成虫で冬越しする。キクキンウワバは名前のように、幼虫がキク科の葉を食べ、成虫のはねが金色をしたガである。見かける機会は多くはないが、駅やアパートの壁などに止まっているのを一度でも見たら、忘れられなくなるほど印象的な昆虫である。上のはねは光の角度によって、まさに金色に輝くのである。コシロシタバは雑木林を代表するヤガの仲間といえる。止まっている時は目立たない地味な色だが、隠れている下のはねは、黒地にはっきりした白い班があってよく目立つ。トモエガの仲間は上のはねの一部に巴の模様がある。シロスジトモエ、ハグルマトモエ、そして大型のオオトモエが見られるが、オオトモエは数が少ない。アケビコノハは上のはねは、まるで枯れ葉そのものだが、それを開くと、びっくりするほど鮮やかな黄色と黒の模様の下ばねが現われる。はねを広げると一〇センチメートル近くあるので、ひときわ印象も深い。成虫で冬越しする。フクラスズメも成虫で冬越しするガで、上のはねは地味だが、下のはねにはこげ茶の地に水色の模様があって、なかなかおしゃれである。アメリカシロヒトリは地味な存在だが、街路樹の葉を食べ荒らすやっかいなガである。特に桜の木に多く、ひどい場合は葉がぼろぼろになるほどである。カノコガは黒地に白と黄色のスマートな感じのするガで、昼間活動し、初夏と秋口の二回成虫の発生が見られる(図3―23)。
図3―22 フサヤガ
(川崎市麻生区黒川 昭和55年9月)
図3―23 カノコガ
(多摩丘陵 昭和52年9月4日)