春先に、土の表面に直径五ミリメートルほどの真ん丸の穴を開けて、頭を蓋のように覗かせ、土中に深く巣を掘っているのは、トウキョウヒメハンミョウの幼虫である。成虫は体長一センチメートル弱で、四月の終りごろから現われ、地上にいて近くを通る小さな虫を捕らえて食べている。アオオサムシは成虫で越冬するが、やはり四月下旬から姿を表わし、主に夜に活動してミミズなどを捕食している(図3―24)。ヒメマイマイカブリも同様の生活をしているが、こちらは主食がカタツムリ類である。セアカヒラタゴミムシは、環境の変化に対して適応力があるようで、団地の中の芝生にも生息できる。やはり小さな虫を食べて生きている。ヒメゲンゴロウは、体長一二ミリメートル程度の小さなゲンゴロウで、シーズンオフの学校のプールや水たまり程度の場所にも住んでいることがある。また、活動期には夜に電灯の明りに飛来する習性があるので、思わぬ場所で出会うこともある。ヤマトデオキノコムシは体長六ミリメートル程度、腹部の先端がはねから少しはみ出ているので「出尾」の名がある。名前のように、枯れ木にできたカワラタケなどのキノコ類を食べて生活している。オオヒラタシデムシは、前述のセアカヒラタゴミムシと同様に、環境の変化に対して適応力が強く、人工的な環境にも積極的に入り込んでいて、出会う機会の多い虫である(図3―25)。雨上りに、路上に出て死んでしまったミミズなどの死骸を専門に食べて暮している。幼虫は、ほ乳類のセンザンコウのような体型で、同じ場所にいるのをよく目にする。ハネカクシ類も、一般に知名度は低いが、多くの種類が生息している。アオバアリガタハネカクシは、体長七ミリメートル程度、田んぼの周囲の地面に多く、団地ができて間もないころは、多数が電灯の明りに飛来して、新聞の紙面を賑せたこともある。というのは、知らずにこの虫をうっかりつぶしてしまうと、からだに毒があるために、体液が皮膚につくと炎症を起こし、ちょりどやけどをしたように水脹れができてしまうからだ。
図3―24 アオオサムシ
(板橋区 昭和51年5月2日)
図3―25 オオヒラタシデムシ
(多摩丘陵 昭和58年7月23日)
さて、クワガタムシに話題を移そう。子供たちに人気のクワガタムシ類は、多摩市とその周辺ではノコギリクワガタ、コクワガタが大部分で、稀にヒラタクワガタが発見される程度である。いかにもいそうな木というのは地元の少年たちにも分かるらしく、木の根際を掘り起こした跡があるから人気のほどがうかがえる。
センチコガネは、動物の糞を専門に食べるいわゆるフンコロガシの仲間である(図3―26)。野生では動物の死体や糞に集まるが、ペットとして飼われる犬や人の糞も好むので、意外に身近に生息している。知識を持たずにこの虫を見た人は、赤銅色に輝く背中を見て、たいてい「わーきれいな虫」と思われることだろう。よく飛び、特に秋遅くに出会うチャンスが多いようである。
図3―26 センチコガネ
(多摩市 昭和62年5月)