様々なハチ

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トサヤドリキバチ(図3―36)は、なじみのないハチであるが、コナラの立ち枯れの木に、案外普通にいる。「土佐」の名があるが、本州、四国に広く分布する種類で、体長一センチメートル弱、黒っぽい筒状の体を持つハチである。名前のようにほかの虫に寄生する習性をもつハチであるが、生態はよくわかっていない。チュウレンジバチとルリチュウレンジはハバチの一種で、両種とも体長八ミリメートル程度、前種はバラの茎に産卵をして、卵からかえった幼虫は葉を食べて大きくなる。このため、園芸家からは嫌われているハチである。後者はツツジの木に集まる。ヒメバチの仲間は非常に多くの種を含んでいるが、ここでは大型種二種類だけを紹介したい。ガロアオナガバチとサッポロオナガバチは共に非常によく似ているが、どちらもコラナの立ち枯れに普通に見られる。体長一〇~一五ミリメートル、黒地の体に白い斑点のある地味なハチである。雌は体長と同程度の長い産卵管を持っていて、木の中にいる他の虫の幼虫に卵を産みつける。ハラナガツチバチ類は、名前のように腹部が細長く、体じゅうに長い毛の生えたハチであるが、地面近くの低い位置を飛んでいたり、花に蜜を吸いに来ている場面によく出会う。この仲間だけで数種類いる。アシナガバチ類も目にする機会の多いハチであるが、やはり数種が住んでいる。中でも雑木林が特に好きな種類がいて、名前をホソアシナガバチという。体長一六ミリメートル程度、体が細長く、淡褐色と黄色のまだら模様のハチで、慣れれば遠くからでもこのハチとわかるほど特徴的な色形をしている(図3―37)。コガタスズメバチは体長二五ミリメートル程度、団地の街路樹に巣を作ることが多い。秋も終るころになって葉が落ちはじめて、初めて巣の存在に気付いたりする。キイロスズメバチも同程度の体長で、体に細かな毛が密生している。こちらは建物の軒下に巣を作るので発見されやすい。オオスズメバチは、最も大きなスズメバチで、女王蜂の体長は四〇ミリメートルを超えるものがいる。このハチは土中に巣を作ることが多い。トックリバチの仲間は、地面の泥を使って直径一~二センチメートル程度の小さな徳利状の巣を作るハチで、数種類がいる(図3―38)。中でも、スズバチは最も大きな種で、体長二・五センチメートルある。庭や公園、学校のグラウンドなどに泥を集めに来るので、目にする機会は多い。もっとも、黒地に黄色の縞模様があるので、スズメバチ類と見誤り、怖がられる場合がほとんどのようであるが、このハチは人を襲うような習性を持ちあわせていない。この意味では、胸が黄色で腹部が黒色、毛むくじゃらでずんぐりした体のクマバチ(体長二二ミリメートル程度)も同様で、春から初夏にかけて天気のよい日に、例えばフジの棚の付近で停止飛行をしているこのハチによく出会う。たいていの人は羽音を聞いただけで逃げ出したくなるようだが、停止飛行しているのは雄で、毒針は持っていないから、剌される心配は全くない。ニホンミツバチは体長一三ミリメートル程度、我が国に古くから生息している野生のミツバチで性質は非常におとなしい。

図3―36 トサヤドリキバチ♀(吉谷昭憲作図)


図3―37 ホソアシナガバチ
(多摩丘陵 昭和53年10月)


図3―38 トックリバチの巣
(多摩市 平成元年6月)