カメムシ類は種類が多いので、大型種で特に目につきやすいものを紹介する。ツチカメムシは地面の上を歩いている体長九ミリメートル程度の平らで黒色のカメムシである。マルカメムシは体長五ミリメートル程度で、名前の通り丸い形をした黄褐色のずんぐり型のカメムシで、クズの葉や茎に多数発見できる(図3―40)。成虫で冬越しをするが、秋遅くなると冬越しの場所を求めて飛び立つ。それが屋外に干した洗濯物に止まることが多く、知らずに一緒に取り込んだために大変不快なにおいの攻撃を受ける場合があり、主婦の嫌われ者となっている。枯れ葉や建物の隙間で無事に冬を越せた成虫は、春になると餌を求めて再び姿を現わすが、おもしろいことに、クズが葉を出す前はコナラの若芽にたかる習性がある。アカスジキンカメムシは体長二〇ミリメートル、成虫は金緑色の地に赤の隈取(くまどり)を持つ極めて美しいカメムシであるが、幼虫の時は白と黒のツートンカラーで、全く別種のようである。ミズキの木にいる。アカスジカメムシもなかなかおしゃれな模様をしていて、こちらは艶消しの赤と黒のストライプ模様である。人参畑に見られるが、野生ではヤブジラミの実が好物のようである。チャバネアオカメムシは黄緑色の体で、名前のようにはねの部分が焦げ茶色をしたカメムシで、最も普通なカメムシの一種である。いろいろな植物につくが、夜に電灯の明かりにも集まる習性がある。ナガメは、菜の花に集まるカメムシという意味が種名になったもので、体長八ミリメートル程度、黒地に赤い模様があって、なかなかきれいである。菜の花の季節柄、春によく観察できる。エサキモンキツノカメムシは、体長一二ミリメートル程度のミズキに暮すカメムシだが、背中にハート型の黄色い紋があって、一度見たら忘れられない昆虫の一つである(口絵)。ツノカメムシ類は多摩市近辺に数種が知られるが、いずれも雌成虫は自分が産んだ卵を守る習性を持っている。ホシハラビロヘリカメムシは体長一三ミリメートル程度、クズの葉の上に普通に見られる淡い褐色をしたカメムシらしいカメムシである。ホオズキにはホオズキヘリカメムシがいる。キバラヘリカメムシはマユミやニシキギにいるので、目にする機会の多いカメムシである。変わったものとして、カワラタケなどのキノコ類に集まるカメムシもいる。ノコギリヒラタカメムシと言い、体長八ミリメートル程度、腹部のへりが鋸状で黒色の扁平な体つきをしている。多くのカメムシが木や草の汁を吸って生活しているが、ほかの小さな虫の体液を吸う肉食性のカメムシもいる。サシガメと呼ばれるグループがそれで、樹上に生活するシマサシガメ、地上に暮らすアカシマサシガメが、多摩市内では普通種として記録されている。
図3―40 マルカメムシ
(多摩丘陵 昭和52年10月16日)