この仲間の昆虫たちは、いわゆる秋の鳴く虫を含むことから、虫嫌いの人たちにも、比較的受け入れられやすいようである。まず、バッタの仲間として最も有名で大型のトノサマバッタを挙げたい(図3―42)。多摩市内では、多摩川の河原に夏から秋にかけてごく普通に見られる。天気のよい日は盛んに飛翔するのが観察できる。もう一種大型種として、ショウリョウバッタも挙げたい。雌の成虫はトノサマバッタよりも大きく、体長は八〇ミリメートルもある。雄は雌に比べて小さく、体長は五〇ミリメートル程度、飛翔時にキチキチと羽音を立てるため、俗にキチキチバッタとして知られている。トノサマバッタに似て、一回り小さなクルマバッタモドキは、最も普通のバッタである。扇型の後ろばねを開くと、中央に黒い帯が走るために、ちょうど車輪が半分見える状態に広がるのでこの名がついた。本家(?)のクルマバッタは、モドキに比べて産地が限定される傾向がある。オンブバッタもなじみの深い種で、小さな体の雄が雌の背中に乗る習性を上手に表現した種名である。コバネイナゴはイナゴの一種でイネにつくが、イネ科の雑草にもつくので、河原の草むらにも普通に見られる。ツチイナゴ(図3―43)は、イナゴの名があるが全身が褐色で、どちらかというとトノサマバッタ型である。成虫で冬を越す変わり種のバッタで、真冬でも日当たりのよい場所で日向ぼっこをしている本種に出会うことがある。ナキイナゴは、初夏から夏にかけてススキの生える草むらに出現するバッタで、黄色味の強い色をしている。雄の成虫は、天気のよい日に、はねと後ろ足の内側をこすり合わせてシリシリシリシリと鳴く。
図3―42 トノサマバッタの食事風景
(板橋区 昭和49年9月)
図3―43 ツチイナゴ(多摩丘陵 10月)