脈翅目の昆虫の代表として、まずウスバカゲロウを挙げたい。この昆虫の幼虫はアリジゴクの名であまりにも有名である。建物の下の日の当たらない、そして雨のかからない乾いた地面に、すり鉢状の巣を作っているが、成虫がトンボのような形をした昆虫になることを知る人は案外少ないようである。そして、幼虫の後は、地中で土を紡いで丸い繭を作ることを知る人はさらに少ないようである。この仲間にはクサカゲロウもいる。成虫は黄緑色をした弱々しい虫だが、産卵方法が変わっていて、長い糸の先に卵をくっつける。卵はまとめて産みつけるが、この卵の塊をウドンゲと称して昔の人は珍重していた。幼虫はアリジゴクに似て細長く、巣は作らずに積極的に歩いて獲物を探す。ツノトンボも同じ仲間で、成虫はやや湿った草むらを好む。全体にトンボに似るが、触角が著しく長いので容易に区別できる。つかむと臭いにおいがする。ヘビトンボとクロスジヘビトンボ(図3―53)も同じ仲間で、幼虫は水中に住み、マゴタロウムシの名で有名である。成虫は陸上生活者だが、水辺から離れることは少ない。しかし夜行性で、電灯の明かりに集まる場合は、かなり遠くまで遠征もする。ヤマトセンブリもまた同じ仲間で、この昆虫は初夏の短い間だけ出現し、水辺のヨシなどの茎に静止しているものが観察されている。
図3―53 クロスジヘビトンボ
(多摩丘陵 平成3年5月17日)