旧石器時代は人類が石器を使い始めてから、約一万年前に土器が発明されるまでの時代をさす。現在知られている世界最古の石器はアフリカのタンザニアにあるオルドバイ遺跡で発見された石器で、約一九〇万年前のものである。それ以後、石器は営々と作り続けられ、人類の主な道具であった。一九〇万年前から一万年前といえば、ほとんど人類の歴史の九九%にあたり、人類の歴史のほとんどが旧石器時代であったことになる。
この長い旧石器時代は前期、中期、後期の三期に大別されている。世界史的に見れば、前期旧石器時代は一九〇万年前から一二~一三万年前の猿人段階の時代、中期旧石器時代は一二~一三万年前から約四万年前のほぼ原人段階の時代、後期旧石器時代は四万年前から一万二〇〇〇年前までの新人段階の時代である。
日本列島では、人類が登場する約六〇万年前の前期旧石器時代に始まり、約一二~一三万年前に中期旧石器時代に移行し、約三万年前に後期旧石器時代になったと考えられている。宮城県上高森遺跡で発見された約六〇万年前の石器は両面加工の斧状の石器で、アフリカやヨーロッパの前期旧石器時代に分布するアシュリアン・ハンドアックスと呼ばれる石器との類似性も考慮されるが、現時点ではヨーロッパと日本列島との間にこの種の石器の分布は知られていない。中期旧石器時代の石器群はユーラシア大陸に分布する石器群との類似性が指摘されている。
日本列島で発見されている旧石器時代遺跡は四〇〇〇か所とも五〇〇〇か所ともいわれているが、その大半は後期旧石器時代に属するものであり、それも約二万年前以降の後半期のものが圧倒的に多く、前期旧石器時代や中期旧石器時代に属する遺跡は極めて限られる。多摩丘陵に限定すれば、後期旧石器時代より古い遺跡としては、中期旧石器時代の新段階に属する稲城市多摩ニュータウンNo.四七一B遺跡があるのみである。
『多摩市史 通史編1』「第4編 原始および古代 第1章旧石器時代」 訂正文(平成15年3月 多摩市教育委員会)