4 後期旧石器時代前半期

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 台形様石器と呼ばれる石器とナイフ形石器、横広剥片石器と縦長剥片剥離技術の共存などに特徴付けられる約三万年前から二万五〇〇〇年前の時代である。多摩市内には乞田川流域の多摩ニュータウンNo.五七遺跡C地区(落合)がある。ナイフ形石器は主に縦長の剥片を素材に用いた石器で、石器の長軸と鋭利な縁辺がほぼ平行するように加工されている。加工には剥片の基部を加工するもの、縦長剥片の一方の縁辺を加工して背を付けるもの、縦長剥片の先端部分に斜めの背を付けるように加工したものなどがあり、後期旧石器時代を代表する石器である(図4―7)。その起源は縦長に用いた剥片の基部を加工したものに求められようか。

図4―7 ナイフ形石器の地域色

 一方、台形様石器は横広な剥片の両側縁に加工を施し、石器の軸に直交する鋭い縁辺もつ台形状の平面形をした石器である。中期旧石器時代の石器の中にその起源を求めることができそうであり、後期旧石器時代の前半で消えていく石器である。