7 遺跡の様子

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 遺物は遺跡から満遍なく発見されるのではなく、特定の範囲に集中して発見される。こうした、遺物が集中して発見される場所を遺物分布集中地点あるいはブロック、ユニットと呼び、遺構のきわめて少ない旧石器時代の貴重な研究対象となっている。遺物分布集中地点からは完成された石器、使った痕跡のある石器や剥片、石器製作の途中で生じた剥片など、様々な石器が発見される。
 こうした遺物分布集中地点がどのような意味をもっているのか、今のところ明確な結論はないが、フランスのパンセバン遺跡では炉を中心に遺物が分布することから、炉を中心にキャンプし、その際に生じた不用品を投げ捨てたり、集めた場所が遺物分布集中地点だと考えられている。さらに、炉と遺物集中地点からなるキャンプは、一過性のものでなく、同じ場所で何回かキャンプが行われたと考えられている。多摩丘陵で発見される遺物集中分布地点も、旧石器時代人のキャンプの後と考えるのが妥当であろう。
 多摩丘陵の遺物分布のあり方は、1 遺物分布集中地点がなく、数点の遺物が単独で発見される遺跡、2 遺物分布集中地点が一か所だけ発見される遺跡、3 複数の遺物分布集中地点が発見される遺跡、に分けられている。乞田川や大栗川流域の旧石器時代全体を対象としたものであり、同じ時期における分類ではないが、旧石器時代人は河川流域を転々と移動し、時には一夜だけのキャンプをし、時には石器を作るなど、ある程度の期間滞在したり、前にキャンプした場所を探しながら獲物を追うという生活をしていたと想像される。