1 土器と弓矢の出現

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 寒く長い氷河時代に終わりを告げ、気候も次第に温暖化へ向かうころ、日本は大陸から孤立し、列島を形成した。今から約一万二〇〇〇年前のことである。以後、弥生時代が始まる約二三〇〇年前までの約一万年の間、縄文時代が続いた。縄文時代の到来を告げたのは土器作りの開始であり、前後して始まった弓矢の使用である。特に、土器の出現は縄文文化を特徴付けるものであり、新時代の幕開けを象徴する出来事であった。
 世界史的にみて、縄文時代が属する新石器時代の特徴は、土器の製作、磨製石斧(ませいせきふ)の使用、農耕・牧畜の開始であるが、縄文時代には牧畜がみられず、農耕も縄文時代晩期以降に始まった。縄文文化は狩猟・漁撈・採集の活動を基礎とした複合型獲得経済体制であったと考えられ、従来想像されていた以上に、植物管理を含めた採集活動に比重の置かれた豊かな社会であったことが分かってきている。