1 草創期

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 草創期には岩陰や洞窟が住居として利用され、竪穴住居はまだ普及していなかったと考えられてきた。多摩市でもこの時期の住居跡は発見されていない。しかし、昭和五十七年にあきる野市前田耕地(まえだこうち)遺跡で草創期前半の不整円形の竪穴住居二軒が発見され、一軒からは炉跡も検出されている。草創期の竪穴住居としては都内唯一の発見例であるが、住居構造としてはまだ不明確で、旧石器時代的様相から脱却していない。多摩市内の多摩ニュータウンNo.五七遺跡など多摩丘陵の草創期の土器を出土する遺跡は、前田耕地遺跡類似の河川沿いの開けた段丘面や低位の緩斜面に位置し、居住空間であった可能性が高い。痕跡の残らない簡単なテントのような構造の平地住居であったと推測される。