図1―2―1 区画改正法則
まずは、多摩市域が属した第八区について決定した区画を確認しよう。表1―2―1にまとめたように、第八区は五六か村が一一の番組に編成された。各番組の石高は、もっとも少ない三番組が一四七八石余、もっとも多いのは四番組の三一一一石余であったが、平均すると二〇二三石ほどになり、県がほぼ規定通りの規模で番組を編成したことがわかる。そして市域八か村のうち、和田村のみ七番組、ほかは九番組に属した。ところが、二か月前には異なる編成が構想されていた。すなわち、二月段階では、最終的に第九区に属した打越村・鑓水村・長沼村の三か村(いずれも八王子市)が第八区に含まれ、そのため一二の小区に分けられていた。市域も区分け自体は同じだが、八小区と一〇小区に編成されていた。ここで注目に値するのが、二月時点では大区と小区という言葉が使われていたことである。つまり、当初は多くの県と同様、神奈川県も大区と小区という用語で区画編成を行っていたにもかかわらず、四月までの二か月間に区・番組という神奈川県独自の用語に変わっていたのである。こうした変更を経て、五月から区番組制が施行されたが、その後さらに番組の数を一つ減らし一〇番組とした。一一番組の矢ノ口村を一〇番組に組み込み、中島村を第五区の八番組に移したのである。
明治6年2月 | 明治6年4月 | ||
区画 | 村名 | 区画 | 村名 |
1小区(4か村) 2030石00 |
鶴間村 | 1番組(4か村) 2030石00 |
鶴間村 |
金森村 | 金森村 | ||
小川村 | 小川村 | ||
成瀬村 | 成瀬村 | ||
2小区(6か村) 1623石22 |
金井村 | 2番組(6か村) 1623石22 |
金井村 |
本町田村 | 本町田村 | ||
大谷村 | 大谷村 | ||
森野村 | 森野村 | ||
原町田村 | 原町田村 | ||
高ケ坂村 | 高ケ坂村 | ||
3小区(3か村) 1478石57 |
木曽村 | 3番組(3か村) 1478石57 |
木曽村 |
根岸村 | 根岸村 | ||
山崎村 | 山崎村 | ||
小野路村 | 4番組(7か村) 3111石06 |
小野路村 | |
野津田村 | 野津田村 | ||
真光寺村 | 真光寺村 | ||
大蔵村 | 大蔵村 | ||
三輪村 | 三輪村 | ||
能ケ谷村 | 能ケ谷村 | ||
広袴村 | 広袴村 | ||
5小区(3か村) 1533石59 |
上小山田村 | 5番組(3か村) 1933石59 |
上小山田村 |
下小山田村 | 下小山田村 | ||
図師村 | 図師村 | ||
6小区(4か村) 1671石23 |
打越村 | 6番組(7か村) 2564石55 |
小山村 |
中山村 | 上柚木村 | ||
鑓水村 | 下柚木村 | ||
小山村 | 越野村 | ||
7小区(6か村) 1895石27 |
上柚木村 | 大沢村 | |
下柚木村 | 中山村 | ||
越野村 | 松木村 | ||
長沼村 | 7番組(5か村) 2003石30 |
堀之内村 | |
大沢村 | 別所村 | ||
松木村 | 中野村 | ||
8小区(5か村) 1971石30 |
堀之内村 | 大塚村 | |
別所村 | 和田村 | ||
中野村 | 8番組(7か村) 2220石21 |
程久保村 | |
大塚村 | 高幡村 | ||
和田村 | 平村 | ||
9小区(7か村) 2144石26 |
程久保村 | 平山村 | |
高幡村 | 三沢村 | ||
平村 | 落川村 | ||
平山村 | 百草村 | ||
三沢村 | 9番組(7か村) 2179石00 |
連光寺村 | |
落川村 | 関戸村 | ||
百草村 | 貝取村 | ||
10小区(7か村) 2128石55 |
連光寺村 | 乞田村 | |
関戸村 | 落合村 | ||
貝取村 | 寺方村 | ||
乞田村 | 一ノ宮村 | ||
落合村 | 10番組(5か村) 1914石17 |
大丸村 | |
寺方村 | 百村 | ||
一ノ宮村 | 長沼村 | ||
11小区(5か村) 1496石77 |
大丸村 | 平尾村 | |
百村 | 坂浜村 | ||
長沼村 | 11番組(2か村) 1199石40 |
矢ノ口村 | |
平尾村 | 中島村 | ||
坂浜村 | |||
12小区(2か村) 1199石40 |
矢ノ口村 | ||
中島村 | |||
この区番組制のもとでは、各区に区長・副区長、各村にはいままで通り戸長・副戸長を置くこととされた。区長・副区長の職務は、県からの布達を管内に周知することをはじめ、戸籍の管理、産業や教育の奨励、戸長らの監督など多岐に渡った。こうした事務を行うため、各区には区会所が設置された。第八区では小野路村(町田市)に定められた。区長・副区長は区内の戸長・副戸長による入札(いれふだ)(投票)によって選ぶこととされたが、最初に限り県が任命した。第八区の区長・副区長に任命されたのは、石阪昌孝(野津田村)と橋本政直(小野路村)であった。一方、戸長・副戸長も入札で選ばれた。その選出方法は、村民一〇〇戸ごとに五人の代議人をあらかじめ選出し、その代議人の入札によって決めるというものであった。では、実際にはどのようにして戸長は選ばれたのか、寺方村を例にみてみよう。