農地買収の実態

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昭和二十五年(一九五〇)七月に刊行された東京都経済局農地課『東京都農地改革資料(一)』によって、多摩村の農地買収・売渡の実態をとらえてみたい。この資料は東京都における農地改革を記録したものである。農地の買収と売渡に関しては、二十五年三月までの成績が掲載されている。この資料では農地買収の第一回目について知ることができないが、第二回から第一五回までの各回の買収面積を知ることができる。第一回目は二十二年三月三十一日に実施されたようである。第二回目の買収は同年七月二日であるが、多摩村では七月中に買収計画が作成されたこともあって、十月二日の第三回目以降に買収が実施された。
 買収の経過と模様は表2―2―1に、売渡については表2―2―2に示したとおりである。多摩村の農地は、昭和二十五年三月末の時点までに、田六四町、畑九五町、計一五九町が農地委員会によって買収されていた。開放予定面積は一六三町であったから、この時点では所期の九七・五パーセントを達成していたことになる。「解放された農地」は、二十年十一月二十三日現在の小作農に対して、優先的に売り渡されたが、農地入手後の三十年間は購入した農地を売ることが禁じられた。営農を継続することが義務となっていた。
表2―2―1 農地改革農地買収一覧表
(単位:町)
多摩村 稲城村 鶴川村 七生村 由木村 八王子市 南多摩郡 東京都
開放予定面積 163 194 278 157 186 299 3,673 15,439
第2回(昭和22年7月2日) 52 133 397
第3回(昭和22年10月2日) 20 34 23 25 370 1,160
第4回(昭和22年12月2日) 72 96 162 99 112 133 1,667 7,135
第5回(昭和23年2月2日) 28 19 16 23 13 404 1,291
第6回(昭和23年3月2日) 3 34 42 2 19 18 203 1,268
第7回(昭和23年7月2日) 24 23 20 26 22 4 524 2,004
第8回(昭和23年10月2日) 9 4 4 2 8 52 233 1,190
第9回(昭和23年12月2日) 2 3 1 1 2 58 451
第10回(昭和23年12月31日) 13
第11回(昭和24年3月2日) 5 12 98
第12回(昭和24年7月2日) 7
第13回(昭和24年10月2日)
第14回(昭和24年12月2日) 3 13 74
第15回(昭和25年3月2日) 1 5 6 1 34 68
合計 64 92 76 69 39 63 918 4,024
95 102 202 88 147 236 2,733 11,146
159 194 278 157 186 299 3,651 15,156
東京都経済局農地課『東京都農地改革資料(1)』(昭和25年7月)より、作表した。南多摩郡には、八王子市の分が含まれている。

表2―2―2 農地改革農地売渡一覧表
(単位:町)
多摩村 稲城村 鶴川村 七生村 由木村 八王子市 南多摩郡 東京都
昭和22年10月 20 28
11月
12月 28 57
23年1月
2月 9 9
3月 106 160 191 100 137 163 1,872 3,694
4月 12 261
5月 39 176
6月 19 127
7月 2 54 27 20 507 1,152
8月 11 1,248
9月 13 1,234
10月 32 27 14 14 13 39 538 3,405
11月 7
12月 10 2 3 10 10 53 214 943
24年1月 15
2月
3月 1 2 1 3 70 392
4月
5月
6月
7月 3 1 2 2 1 88 294
8月
9月
10月 3 1 17 195
11月
12月
25年1月
2月
3月
合計 62 92 76 65 40 60 908 3,553
92 101 193 87 143 199 2,552 9,682
154 193 269 152 183 259 3,460 13,235
東京都経済局農地課『東京都農地改革資料(1)』(昭和25年7月)より、作表した。南多摩郡には、八王子市の分が含まれている。

 農地改革の進展によって、当然ではあるが自作農と自作地は大幅に増加した。二十五年の『農地等開放実績調査』によると、二十年十一月二十三日には、多摩村の自作地は二九二町、小作地は一五九町であった。それに対し、二十五年八月一日には自作地は約三八八町に増加し、小作地は約七〇町に減少している。農地を買収された地主数は、個人地主で在村のものが一九三戸、不在村のものが八六戸、法人・団体で在村のものが一四、不在村のものが二であった。売渡を受けた農家戸数は四三九戸である。自作農創設特別措置法にもとづく施行令では、二十三年十二月三十一日までに完了することになっていたが、二十五年三月二日まで、期限が延長された。多摩村の場合、二十三年十二月の時点で農地の買収も売渡も事実上終了していた。
 敗戦後の食糧事情の悪化と雇用不安に対応するためもあって、未墾地解放も重要な政策課題として位置づけられていた。自作農創設特別措置法は「農地以外の土地で農地の開発に供しようとするもの」を未墾地とした。多摩村でも未墾地解放が実施された。未墾地買収計画が実施されたのは昭和二十二年十一月からである。『東京都農地改革資料(一)』には、未墾地の買収と売渡に関する昭和二十五年七月までの成績が記載されている。未墾地解放の詳細については、682ページの表2―2―3と683ページの表2―2―4を参照していただきたい。
表2―2―3 農地改革未墾地買収一覧表
(単位:畝)
(A)民有地関係
多摩村 稲城村 鶴川村 七生村 由木村 八王子市 南多摩郡 東京都
昭和22年7月2日 3,190
昭和22年10月2日 300 300 882
昭和22年12月2日 764 1,728 14,435
昭和23年3月2日 771 348 1,658 3,982 26,136
昭和23年7月2日 52 353 2,755 12,339
昭和23年10月2日 916 9,886
昭和23年12月2日 118 8,224
昭和24年3月2日 193 166 4,957 25,963
昭和24年7月2日 11 995 13,820
昭和24年10月2日 740 903
昭和24年12月2日 12 45 695
昭和25年3月2日 15 52 9,164
昭和25年7月2日 95 191 394
823 1,984 178 95 1,658 16,779 126,031

(B)旧軍用地及び国有地関係
多摩村 稲城村 鶴川村 七生村 由木村 八王子市 南多摩郡 東京都
昭和22年10月2日 1,223 1,223 6,068
昭和22年12月2日 872
昭和23年3月2日 133
昭和23年7月2日 9,997 16,335
昭和23年10月2日 9,283
昭和23年12月2日 1 8,066
昭和24年3月2日 4,030 10,832
昭和24年7月2日 2,746 160 3,031 9,158
昭和24年10月2日 7,536
昭和24年12月2日
昭和25年3月2日 2,493
昭和25年7月2日 33,617
2,746 160 1,223 18,282 104,393
東京都経済局農地課『東京都農地改革資料(1)』(昭和25年7月)より、作表した。南多摩郡には、八王子市の分が含まれている。

表2―2―4 農地改革未墾地売渡一覧表
(単位:町)
(A)民有地関係
多摩村 稲城村 鶴川村 七生村 由木村 八王子市 南多摩郡 東京都
昭和23年11月 24.34
昭和24年2月 5.37
昭和24年5月 57.27
昭和24年8月 1.16 64.59
昭和24年11月 19.43 1.66 61.95 205.49
昭和25年2月 8.44 0.23 0.12 15.16 84.52 252.90
昭和25年5月 0.15 0.51 98.01
昭和25年8月 0.95 6.14 20.30
8.44 19.81 1.78 0.95 15.16 154.28 728.27

(B)旧軍用地及び国有地関係
多摩村 稲城村 鶴川村 七生村 由木村 八王子市 南多摩郡 東京都
昭和23年11月
昭和24年2月 14.59 6.04 18.67 55.79 199.32
昭和24年5月 0.27 68.97
昭和24年8月 22.00
昭和24年11月 4.43 1.59 11.98 31.41 75.12
昭和25年2月 17.70 18.64 108.10
昭和25年5月 52.10
昭和25年8月 28.25 182.22
19.02 19.29 6.04 30.65 134.36 704.83
東京都経済局農地課『東京都農地改革資料(1)』(昭和25年7月)より、作表した。南多摩郡には、八王子市の分が含まれている。単位(町)は、推定した。