農林省統計調査部『一九六〇年世界農林業センサス』市町村別統計書(東京都)には、農家生活についての調査項目がある。昭和三十五年二月一日時点の調査であり、ニュータウン開発以前の農家生活の一端を知るための格好の資料となっている。この調査では、多摩村の農業集落総数は二五、農家総戸数は六三六とされている。当時の多摩村ではどのような農家生活が営まれていたのか。以下に調査結果を提示してみたい。
まず、食生活についてみてみよう。主食慣行は、米が九割以上である集落が四集落、米が五割以上九割未満が二一集落となっていた。魚・肉類(加工品や缶詰などを含む)の消費状態では、魚を時々(月に数回程度)食べ、肉をほとんど食べない集落が一。魚を常時(週に数回以上)食べ、肉を時々食べる集落が二四である。
次に住まいの様子をみると、炊事にガス・電気・石油コンロなどを利用している農家数は、利用している農家がわずかある集落が一六、利用している農家が半分ぐらいある集落が八集落、利用している農家がほとんどである集落が一であった。暖房用にストーブを利用している農家数の程度は、利用している農家が全くない集落が八、利用している農家がわずかある集落が一七となっていた。戦後に台所や風呂場などを改善した農家数の程度は、改善した農家がわずかある集落が二、改善した農家が半分ぐらいある集落が一八、改善した農家がほとんどである集落が五であった。また、飲料水源は二五の全ての集落が井戸を利用しており、動力ポンプ利用が一集落、人力ポンプ利用が二三集落、つるべ井戸その他利用が一集落であった。多摩村の農家全体の耐久消費財所有台数をみると、テレビが一九一台、電気洗濯機が九八台、オートバイ・スクーター・バイクが一一八台、家庭用揚水ポンプが一二八台、家庭用太陽熱利用温水器が三基であった。