このときに議論された問題点は、八月十四日の第五三回首脳部会議に報告され、同会議は、事業決定の告示の促進、用地買収の促進、連絡協議会による事業の連絡調整の三点を指示した(資四―301)。九月二十一日には、東京都が建設省計画局、道路局、河川局に事業予算の説明を行った(『多摩ニュータウン構想』)。多摩市役所には、「多摩新都市建設に関する要綱」(資四―299)という文書が保存されている。この文書は、町役場が当時、施行者側から説明を受けたときに受け取ったものと思われる。これによると、事業予算は、宅地造成費と関連公益事業に一五五九億円、住宅建設と道路・河川の整備に一四三四億円、民間鉄道事業に一九三億円、総計三一八七億円が見込まれていた。
図2―5―5 都庁内の定例会議の記録
また農林施策の話に戻ることにしよう。この年の一月、東京都の副知事、関係局長、新住事業の施行予定者及び地元市町長で構成する南多摩新都市開発事業連絡協議会が設置されていた。九月一日に第一回の協議会が開かれ、「用地買収を円滑に進めるため」、「用地買収に関する基準を統一」することが決定した。十一月十六日には同協議会の施行者部会が開かれ、「用地買収基準、補償基準、及び生活再建措置基準」が定められた。翌十二月、東京都は「関東農政局に対して、これらの基準に基づいて具体的な農業者対策を実施する旨申し入れ了承され」た(『多摩ニュータウン開発の歩み』)。これを受けて、十二月二十四日に農林大臣の開発に同意する回答を得て、十二月二十八日、都市計画の決定公告がなされた(資四―302)。このとき決定した都市計画は、さきにのべたように、マスタープラン第六次案にほぼ則ったものであった。