市制の施行

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十一月一日には市役所の開庁式、市議会の市制宣言が行われた。市制宣言では「急激な社会構造の変化に対処し、われわれの高く掲げた理想的都市建設をめざして、いかなる困難にも堪えて渾身の力を尽くすとき、市民の文化の向上と福祉繁栄の道は必ずやひらけるものと確信する」と「太陽と緑に映える都市」の建設に向かう決意が高らかとうたわれた。三日には市制施行記念式典が開かれ、功労者の表彰と消防庁音楽隊によるパレードなどが催された。ほかにも数多くの市制記念行事が行われている(表2―5―2)。

図2―5―16 市制施行宣言のようす

表2―5―2 南多摩郡各市の町制・市制施行日
市名 町制施行日 市制施行日 町制期間
八王子 明治22.4.17 大正6.9.1 28年4月14日
町田 大正2.10.1 昭和33.2.1 44年4月
日野 明治26.6.19 昭和38.11.3 70年4月14日
稲城 昭和32.4.1 昭和46.11.1 14年7月
多摩 昭和39.4.1 昭和46.11.1 7年7月
三鷹(参考) 昭和15.2.11 昭和25.11.3 10年8月21日
『全国市町村要覧』ほかより作成。

 さて、こうして旧南多摩郡域に八王子、町田、日野、多摩、稲城の五市が成立したわけであるが、多摩と稲城の市制施行にあたっては、のちにさらなる再編成を行うふくみが残されていた。多摩町議会は、昭和四十六年(一九七一)七月一日に「市制施行促進に関する決議」をあげたのち、同年九月二十七日には「近隣市町との行政協力体制の強化に関する決議」を議決した。それによれば「二市二町にまたがる多摩ニュータウン事業の進展に伴い、増大する行政需要にこたえるとともに住民福祉の飛躍的向上をはかるため、市制施行後も近隣市町との協力体制を一段と強化し、住民の総意のもとに、行政区画の一元化に努力する」とうたわれていた。いっぽう稲城市でも同じ日に同様の決議がされ「市制施行後も新住宅市街地開発事業の進捗状況をふまえてなお一層将来近隣市町との合併等広域行政の拡大を図るため努力する」(『稲城市史・下巻』)と、将来の合併へのふくみをもたせている。
 また、市制施行日にあたる十一月一日付の「たま広報」で横倉真吉議長は「多摩市は四市にまたがる多摩ニュータウンの中核都市として責任は重く、かつ大であります。しかし、どのような困難をも克服し、市民相携えて緑の中に理想都市を建設して行かなければならないと存じます」と、今後の多摩市が多摩ニュータウンの中核都市として歩んでいくことを強調した。