公共施設の整備

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昭和四十六年(一九七一)三月、多摩ニュータウン諏訪、永山地区への入居が開始され、多摩市の人口は、昭和四十年代半ば以降急激に伸びていった。しかし、財政的理由から社会教育や社会福祉などの様々な公共施設の整備は立ち遅れていた。多摩市に公共施設が開設される以前、役場庁舎、小・中学校の校舎、農協、自治会の集会所などが利用され、社会教育活動が行われていた。また、東京都の移動図書館「むらさき号」が、市内を巡り図書館の役割を担っていた。昭和三十年四月に社会福祉事業を計画する「多摩村社会福祉協議会」が発足していたが、社会福祉施設は未整備であった。

図2―5―33 移動図書館「むらさき号」(昭和46年頃)

 市内の人口増加とともに住民より公共施設整備が要望されるようになり、当時の多摩町は、社会教育や社会福祉などの公共施設整備の必要性に迫られた。そこで多摩町は、総合的なまちづくりを推進するため、昭和四十六年(一九七一)、町政の基本方針として、多摩町総合計画「基本構想」を定めた。そして昭和四十八年八月、実行計画である多摩市総合計画「前期基本計画」が策定された。
 基本構想に基づき、社会教育施設として、昭和四十八年(一九七三)八月、初の公民館(現関戸公民館)が市役所に隣接して開館した。公民館主催の各種講座や市民グループなどの自主的な活動の場として大いに活用されている。また、同年同月には、とくに小・中学生からの要望が強かった初めての図書館(現本館)が、公民館に併設して開館した。さらに、翌四十九年三月、図書館利用の不便な地域のため、自動車図書館「やまばと号」が市内二〇か所を定期的に運行し始めた。
 昭和四十六年(一九七一)からの多摩ニュータウン入居により、小・中学生人口が際立って増加した。そのため、市の財政は学校整備に追われ、図書館の新設はなかなか進まなかった。昭和五十四年(一九七九)十月、ようやくニュータウンに初めて諏訪図書館が開館し、五十六年六月には東寺方図書館が、五十七年五月には豊ヶ丘図書館が相次いで開館した。当初、図書館の開館は、週四日間、土・日曜日の利用は午後からであったが、利用者の便宜を図るため、昭和五十八年四月から開館日が増やされた。さらに、より多くの市民が利用できるよう、昭和五十九年八月、聖蹟桜ヶ丘駅前ビル内に関戸図書館が開館した。関戸図書館では通勤通学帰りの利用者に配慮して、他の図書館より平日の開館時間が延長されていた。平日すべての開館時間の延長は、三多摩地域では初めての試みであった(『朝日新聞』昭和五十九年七月二十一日付)。
 諏訪、東寺方、豊ヶ丘の三図書館は、市内をいくつかに区分けした各コミュニティー区域の複合施設の一部として開館した。複合施設とは、各コミュニティー区域の特性を考慮した公共施設配置が行われ、「相互に補い合いながら、総体的に学校教育、社会教育、福祉などの機能を」果たし、「市民相互の自主的交流を促進」させる施設のことである(『たま広報』二四四号 昭和五十四年四月一日付)。昭和五十三年四月、連光寺地区に初めて誕生し、児童館、老人福祉館が併設されている。
 市民相互の自主的交流を促進するため、また、スポーツ・余暇活動などのため、運動施設整備が進められ、昭和四十九年(一九七四)七月、関戸地区に市民プールが開設された。さらに、多摩ニュータウン区域内の公園を中心に野球場、テニスコートなどの施設が順次整備され、昭和五十八年十月には、東寺方地区に総合体育館が開設された。
 社会教育施設が整備される一方、老人や児童などを対象とする社会福祉施設も整備が進められた。昭和五十年(一九七五)二月、老人や心身障害者などの福祉活動を促進する施設として、多摩清掃工場に隣接した場所に多摩市福祉センターが開館した。さらに、福祉センターの地区分館として、老人福祉館が建設されていった。昭和五十三年から五十六年の間に複合施設として四館が開館している。児童福祉の向上を図るため、児童館建設が市内各地区で行われ、昭和四十八年の一ノ宮児童館の開館を皮切りに、昭和五十七年までの十年間に七館が開館している。
 多摩市は、昭和四十九年(一九七四)から既存地区の自治会集会所の建設に取り組み始めている。多摩ニュータウンでは、住宅建設時にあらかじめ集会所も建設されていた。一方、既存地区の集会所は、そのほとんどが老朽化し、また、集会所を持っていない自治会もあった。そこで、「集会所を通してコミュニティ形成」を図るため、市による集会所建設が始められた(『たま広報』二九五号昭和五十六年二月五日付)。
 こうして市内の公共施設整備は、多摩ニュータウン入居後の昭和四十年代後半から徐々に進展していった。しかしながら、急増する人口に対し、市の公共施設整備の速度は追いつけなかった。
表2―5―3 市内の図書館一覧
図書館名 開館年月日
市立図書館(現本館) S48.8.22
諏訪図書館 S54.10.1
東寺方図書館 S56.6.9
豊ヶ丘図書館 S57.5.29
関戸図書館 S59.8.1
聖ヶ丘図書館 H7.10.1
永山図書館 H9.4.1
注)諏訪図書館は、永山図書館開館のため平成9年3月31日で閉館された。

表2-5-4 市内の児童館一覧
児童館名 開館年月日
一ノ宮 S48.4.2
永山 S49.4.7
愛宕 S50.4.30
連光寺 S53.4.1
豊ヶ丘 S54.4.1
東寺方 S56.4.1
諏訪 S57.4.1
桜ヶ丘 H3.4.1
落合 H4.9.1

表2―5―5 市内の複合施設一覧
地区 開館年月日 併設施設
連光寺(連光寺福祉館) S53.4.1 児童館・老人福祉館
豊ヶ丘(豊ヶ丘福祉館) S54.4.1 児童館・老人福祉館
地区市民ホール・図書館(S57.10.1)
諏訪(諏訪福祉館) S54.8.10 老人福祉館・地区市民ホール
図書館(S54.10.1)
東寺方(東寺方福祉館) S56.4.1 児童館・老人福祉館・地区市民ホール
図書館(S56.6.9)
関戸・一ノ宮 S63.4.1 老人福祉館・地区市民ホール
(関戸・一ノ宮福祉館)
注)関戸・一ノ宮福祉館は、平成3年4月1日からコミュニティーセンターとして位置付けされた。