福祉施設の拡充

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昭和四十年代後半、多摩ニュータウン入居などで多摩市の人口は急増したが、児童、心身障害者、高齢者などに対する福祉行政や福祉施設の整備は、最も立ち遅れていた。おもにニュータウン入居の影響で、とりわけ小学校児童の年齢層が昭和五十年代後半まで集中的に増加し、さらに、共働きの家庭が増えたため、児童館、学童保育などの設置が保護者側より強く要望された。昭和四十八年(一九七三)四月、一ノ宮児童館が開館し、学童クラブが市内で初めて設置された。それ以降、市内の児童館などに次々と学童クラブは設置されていった。学童保育を希望する保護者が増加するとともに、市の学童保育費が増大したため、市は昭和五十七年度から有料化に踏み切っている。
 昭和五十年(一九七五)二月、高齢者と心身障害者などの福祉活動を推進し、福祉行政の充実をはかるため、落合地区に多摩市福祉センターが開館した。福祉センターでは、隣接する多摩清掃工場のごみ焼却時に発生する余熱が利用され、風呂や暖房に利用されていた。福祉センターまでの交通手段として、送迎バスが運行されていた(資四―390)。高齢者が身近に集まり交流できる場として、老人福祉館が地区複合施設に併設されていった。
 昭和三十九年(一九六四)七月、多摩第一小学校内に心身障害児学級「高麗学級」が開設され、心身障害児への教育が始まった(『たま広報』一号 昭和三十九年九月一日付)。昭和四十九年七月から、市教育委員会は、中沢地区の重症心身障害児施設「島田療育園」へ教師を派遣し、「訪問学級」を開設している(『たま広報』一二八号 昭和四十九年九月二十日付)。市は小・中学校に、重度の心身障害児を受け入れることは困難であったため、保護者は、やむなく町田・八王子市にある養護学校へ通学させていた。しかしながら、その負担は非常に重く保護者は、市に対し、市内小学校への養護学級設置や都立養護学校誘致などを要望していた(資四―370・374)。昭和六十年四月、多摩ニュータウン聖ヶ丘地区に都立多摩養護学校が開校する。
 昭和四十九年(一九七四)四月から永山児童館内で、心身に障害をもった就学前の幼児に対し、心身障害児通所訓練事業「ひまわり教室」が開設された。昭和五十五年四月、市立貝取保育園開設にともない、健常児との交流をはかりやすくするため、「ひまわり教室」は貝取保育園に移転している。
 多摩市社会福祉協議会は、社会福祉を幅広く推進するため、昭和三十年(一九五五)四月に地域の福祉関係団体などによって結成された組織である。昭和五十六年四月、心身障害者が就労の場を得ることにより、社会で自立することができるよう援助するため、心身障害者通所授産施設「つくし作業所」が開設された。つくし作業所は、市から土地・建物の無償提供を受け、管理運営については多摩市社会福祉協議会が行っている(資四―393)。平成元年(一九八九)四月、在宅障害児(者)の訓練の場として、心身障害児(者)通所訓練施設「のぞみの家」が同じ方式で開設された。のぞみの家の管理運営は、多摩市身体障害者福祉協会「アートひまわり」とその支援組織「すぎなの友」が受け持っている(資四―397)。
 昭和五十五年(一九八〇)の国際障害者年を契機に、多摩市では「障害者行動福祉計画」が策定される。昭和五十七年六月には、すべての市民が公共施設などを利用しやすくするため、階段、手すりなどの施設整備基準を設けた「心のかようまちづくりのための福祉環境整備要綱」が決定施行された(『読売新聞』昭和五十七年六月三日付)。平成七年(一九九五)十月、様々な社会状況の変化に対応させるため、「福祉のまちづくり整備要綱」として改正施行されている。
 昭和五十五年(一九八〇)三月、市内の健康で働く意欲のある高齢者が豊かな経験と能力を活かし、就労の場を得るため、「多摩市高齢者事業団」が設立された。同年十二月、労働省による指導のもと「社団法人シルバー人材センター多摩市高齢者事業団」として新たに発足し、平成二年(一九九〇)七月、「社団法人多摩市シルバー人材センター」へと改称した。
 多様化する福祉への要望に柔軟にきめ細かく対応するため、会員同志が支え合う相互扶助を基本理念に、平成二年(一九九〇)四月、「多摩市福祉サービス公社」が設立され、同年十月から業務を開始し、生活に必要なサービスを有償で提供している。平成四年十月には多摩市福祉サービス公社は財団法人化した。
 平成三年度から心身が不自由な高齢者のため、高齢者在宅サービスセンター事業が実施された。高齢者在宅サービスセンター事業は、特別養護老人ホームに併設されていたケアセンター事業、デイホーム事業(ともに昭和六十一年四月から実施)などを統合し、機能回復訓練、ショートステイ、入浴サービス、食事サービスなど日常生活に必要なサービスを総合的に提供している。また、自宅で介護にあたっている市民からの相談に応じるため、平成六年度から順次高齢者在宅サービスセンター内などに、在宅介護支援センターが四か所開設されている。
 平成六年(一九九四)三月、多摩市は、平成六年度から十二年度までの市が推進すべき福祉政策を総合的にまとめた「多摩市健康福祉推進プラン(多摩市地域福祉計画)」を策定した。多摩市健康福祉推進プランをもとに地域ぐるみの福祉を推進するため、高齢者や障害者のための施設として、平成九年四月、多摩市総合福祉センターが開設され、同年五月から業務を開始している。総合福祉センターには、高齢者在宅サービスセンター、老人福祉センター、障害者福祉センター、社会福祉協議会、福祉サービス公社などの福祉施設が集中して併設され、地域福祉の拠点となっている。

図2―6―14 多摩市総合福祉センター

 多摩市の人口に占める高齢者人口比率は、昭和四十年代半ばから緩やかに上昇してきたが、多摩市全体の人口の伸びが落ち着くのとは逆に大きく上昇し始めている。平成六年度には多摩市の高齢者人口比率が、高齢化社会と分類される七パーセントの数字を超えた。全国的に見れば、まだ高齢者人口比率は低い方であるが、多摩市もやがて急激に高齢化がすると予測されている(『たま広報』六九〇号 平成六年十二月五日付)。

図2―6―13 市内の高齢者人口比率と総人口の推移

『統計たま』より作成。
注)1 高齢者人口は65歳以上。
  2 総人口は各年10月1日現在。高齢者人口は各年1月1日現在。