駅周辺施設整備の進展

933 ~ 936
昭和五十六年(一九八一)十二月、『多摩市駅周辺開発基本計画報告書』がまとめられた。その報告書では、市内三駅周辺地区の発展を図るため、「将来を見通したまちを形成するように都市基盤施設の整備と適切な商業、業務施設の立地をはかり、それぞれの駅周辺地区の機能分担を明確にして特色のある商業核づくりを行う必要」があるとしている。聖蹟桜ヶ丘駅周辺については、「にぎわいと水と緑のまちづくり」を目標に、川崎街道をはさんだ南北間にひとの流れを確保し、商店の並ぶ街路をカラー舗装などで整備する。多摩センター駅周辺については、「商業と文化を担うまちづくり」をめざし、駅南北地区に一体性を持たせ、統一をはかる。商業施設では大型店舗や専門店を、業務施設では中心的役割を持った各種施設を整備する。永山駅周辺については、「買い物と楽しい憩いのまちづくり」を、市内で不足している教養・娯楽施設を誘致し、かつ業務施設の立地をはかることとされている。
 昭和五十七年(一九八二)八月、京王帝都電鉄(現京王電鉄)は「聖蹟桜ヶ丘駅周辺総合開発基本計画」を多摩市に提出する。百貨店や専門店が入店するショッピングセンターの建設、京王ストアの建て替えや、買い物利用者用の立体駐車場の設置などが計画されていた(『朝日新聞』昭和五十七年八月二十一日付)。
 聖蹟桜ヶ丘駅に隣接して、昭和五十九年(一九八四)三月、マンションや約一〇〇の専門店などが入居する「ザ・スクエア」が完成し、ショッピングセンターが開店している(『朝日新聞』昭和五十九年三月三十一日付)。
 こうした聖蹟桜ヶ丘駅周辺の商業施設の拡充の動きなどは、地元商店や永山駅前商業施設「グリナード永山」へ影響をおよぼした。そのため、昭和六十年(一九八五)十一月、グリナード永山は店舗を九九に拡大し、新装オープンをしている(『日本経済新聞』昭和六十年十一月三日付)。一方、大型店舗の出店などで最も大きな影響をうける地元商店側は、大型店舗の開店で客寄せ効果が期待できると予想し、地元商店を専門店化することで、共存をはかる意向であった(『毎日新聞』昭和五十四年二月十三日付)。
 昭和五十九年(一九八四)二月、京王は、聖蹟桜ヶ丘駅の総合開発事業に着手し、同駅に昭和六十一年三月、百貨店や多目的ホールなどを有する「京王聖蹟桜ヶ丘ショッピングセンター」をオープンさせた(『朝日新聞』昭和六十一年三月二十九日付)。一〇〇〇台収容可能な駐車場、ミニシアターや飲食店街なども併設し、多摩地域最大規模の売り場面積をほこっている。また、買い物利用者などの利便性を考慮して、バスターミナル機能の充実がはかられている(『京帝たより』四〇〇号 昭和六十一年三月二十四日付)。
 多摩センター駅周辺の商業・業務施設整備について、百貨店ビル、ホテル、専門店街、映画館などが入居する総合レジャー施設などの計画がまとまり、昭和五十八年(一九八三)七月、第二期施設整備計画の合同記者発表が行われた。昭和六十年四月に、電鉄会社によるホテルおよび総合レジャー施設の建設が決定する(『東京新聞』昭和六十年四月十七日付)。平成元年(一九八九)十月、百貨店ビルに多摩ニュータウン初のデパートと立体駐車揚が、同二年三月、総合レジャー施設が、同年四月には本格的なホテルがそれぞれオープンした。また、文化・娯楽施設として、昭和六十二年十月には、多摩中央公園内に複合文化施設「パルテノン多摩」が、平成二年には美術館、大規模室内型レジャー施設がそれぞれオープンしている(資四―431 多摩ニュータウンの商業・業務施設などの進出状況は、この資料にもとづく)。
 昭和六十一年(一九八六)五月、新住宅市街地開発法が一部改正され、六十二年四月、六十三年三月と相次いで、多摩センター駅周辺の住宅用地、合わせて約一四ヘクタールが「特定業務施設用地」へと変更され、企業誘致の用地が確保された(資四―430)平成二年(一九九〇)四月、大手保険会社と教育事業などを行う大手出版社の進出が決まり(『朝日新聞』平成二年四月二十四日付)、ともに平成六年に都心から移転を果たしている。

図2―6―21 開発途上の多摩ニュータウン駅周辺
(昭和62年頃)

 昭和六十三年(一九八八)十一月、住宅・都市整備公団は、永山駅周辺についても、昼間人口や地元雇用の機会を増やすため、レジャー・レクリェーションなどの余暇関連施設、本社機能を持つ事務所などの業務施設と、社会・生涯教育などを行う施設の誘致を計画している。そして、平成四年にボーリング場などを備えた大型レジャー施設や、保険会社二社および大手旅行会社の事業所と研修所などがそれぞれ開設された。
 平成二年(一九九〇)三月、唐木田地区の区画整理事業および多摩ニュータウン開発の進展に合わせて、小田急多摩線が多摩センター駅より延伸し、唐木田駅が開業する(資四―439)。唐木田地区には、新住宅市街地開発法の一部改正により、約九ヘクタールの特定業務施設用地が確保されていた(資四―430)。多摩市は、唐木田地区を文化・教育地区と位置付け、それと調和する商業・業務施設の誘致をはかっている。
 聖蹟桜ヶ丘駅南側の駅前交差点付近では、平成九年度から「聖蹟桜ヶ丘駅南地区第一種市街地再開発事業」が着工されている。同駅周辺では昭和六十一年(一九八六)に「聖蹟桜ヶ丘駅南第一地区土地区画整理事業」が完了し、市の複合施設や公園が整備されていた。平成二年度に策定された「聖蹟桜ヶ丘地域整備計画」に沿って、ショッピングセンター、市の総合文化施設、住宅、駐車場などが整備される計画である。また、再開発地区と駅周辺施設との一体性を持たせるため、互いに歩行者用連絡路を架橋する計画もある(資四―442)。永山駅周辺では、平成九年(一九九七)四月に図書館、公民館などを有する複合施設「ベルブ永山」が開設されるなど、ほぼ駅周辺整備は完了している。多摩センター駅周辺の整備については、平成十一年度に予定されている多摩都市モノレールの全線開業で、企業誘致の促進が期待されている。唐木田駅の周辺の整備は、まだ端緒についたばかりである。

図2―6―22 現在の聖蹟桜ヶ丘駅前の風景
(平成11年3月)