本編は、田中宣一編集委員と執筆者、調査員の方々のご尽力により完成したものであります。
ご周知のとおり民俗の調査内容は、生業、衣食住、信仰、人生儀礼、伝説やことわざなど、かつての農村生活やなりわいを営むための個人や地域社会の知識や技術の伝承で、これらの大半は文字などで記録されていません。従って、都市化による生活や産業の変化や、時間の経過により、伝承は変化したり消滅したりします。
このような伝承の特性を踏まえ、多摩市史編さん事業を伝承採集の貴重な機会として、民俗部門のご担当の方々に熱心に調査を行って頂きましたが、限られた時間で多摩市域に伝わる伝承を拾い尽くして頂くことはとても困難でした。しかしながら多くの市民の方々のご協力により、かつて行われていた行事や保存食作り、踊りなどを再現して頂き、それらを記録できましたことは大きな収穫であったと考えております。
本書の刊行を機に、地域の伝承に市民の皆様が一層の興味を持たれ、伝承の価値をあらためて認識して頂く契機となれば、これに過ぎる喜びはございません。
末筆ながら、ご多忙の折調査にご協力頂いた方々、資料を提供して下さった方々に厚く御礼申し上げます。
平成九年三月
多摩市史編さん室