生業を田畑や山林に依存する家々が大多数を占め、かつ転出や転入が比較的少なかった昭和三十年代までの市域の村落には、長年にわたって形成されたかと思われるさまざまな互助協同の慣行が存在していた。それらを大別すると、そのつど各家々が原則的には等しい立場で協同してことに当たるものと、当面はある家を援助する形での協同とがあった。前者には、神社・小祠の祭礼や講行事など信仰に関することの協同、道普請や防災活動など村落の直接的な安寧を目的とする協同、用水や共有林の管理など生業維持にかかわる協同があり、後者には、祝儀・不祝儀の手伝い、家普請や屋根普請、それに農作業におけるユイなどがある。
このうち、信仰にかかわる協同については、本章第四節や第五章にゆずり、また、祝儀・不祝儀の手伝いは本節の次の項「4 祝儀・不祝儀等のつきあい」で述べたい。したがって本項で扱うのは、ハレ(晴)の諸局面を除いた、いうなれば日常の場における互助協同労働の慣行についてである。