ジシンルイ

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ジシンルイとは地親類の意味かと思われるが、この家結合の契機については必ずしも明確ではない。しかし、村落においてはいろいろな局面で重要な役割をはたす家連合体である。
 ジシンルイについて、市域ではよく次のような説明がされる。「先祖が一つで、昔から縁が濃くも薄くもならない関係で、墓が同じである。本分家同士でもジシンルイとは限らない。これに対して本分家は、三、四代たつと縁が薄くなる」「同じ一族で、古くからの代からのつきあいのある家である」「血のつながりはそう近くないが、家が近所ということもあってよくつきあっている家」「元は親類で、遠くなった親類」等々。これらからみて、ジシンルイというのは、何となく系譜関係があるのではないかと思いつつ古くからつきあっている近所の家同士ということになろうか。先祖を同じくするかどうか確かなことはわからないが、ぼんやりとそのように意識されていることが多い。墓が同じという例も多いといわれるが、これは悉皆調査をしていないので多いかどうか何とも言えない。
 次に、系譜への意識という点で比較的近似しているイッケとの関係について、関戸地区のA家とP家の例をみておこう。図2-5はA家の例で、B・C両家がA家のジシンルイで、D・E家がイッケである。B・C家は古い時代はいざ知らず、少なくとも現在は系譜関係が同じだとは意識されていない。D・E家は明治以降のA家の分家であることは間違いなく、A家の場合にはジシンルイとイッケに重なる家がない。

図2-5 A家のイッケとジシンルイ

 図2-6は、ジシンルイとイッケに重なる家がある例で、P家にはジシンルイづきあいをする家が四家、イッケづきあいをする家が同じく四家あるが、それぞれ三家(R・S・T家)までが重複している。すなわち、R家はP家の分家。S家はR家の隠居分家、T家はR家の分家であるから、S・T両家はP家にとっては孫分家の関係になり、ジシンルイのR・S・Tの三家はP家にとってイッケでもある。なお、Q家はP家の奉公人分家X家がツブレになった跡を継いだ家で、P家のイッケとは認められていない。U家はP家の分家であるが、ジシンルイには加わっていない。以上、A家とP家の例をみたが、このようにある家にとってジシンルイとイッケがまったく重ならない家もあるし、その多くが重なる家もある。なぜこのようになっているのかは明らかではない。

図2-6 P家のイッケとジシンルイ