屋敷取り

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図3-13は一ノ宮地区の屋敷取りを模式的に示したものである。多摩川からの用水沿いに位置している。主屋・物置・土蔵・湯殿が主な建築物であり、主屋を中心に東側に物置、西側に土蔵、正面に湯殿が位置していた。周囲には畑があり、家庭用の野菜、養蚕用の桑が植えられていたが、第二次大戦後さまざまな副業をやる中で鶏小屋や、豚小屋などの作業小屋が畑を潰して建てられた。

図3-13 川沿いの民家屋敷取り(一ノ宮地区)

 樹木は四方からの風を防ぐために屋敷の周囲に高さの高い木が植えられていた。特に台風時の南風は強く、これの緩衝として、特に草屋根に直接風が当たるのを防ぐため主屋の南面に樫の木が三本並べて植えられていた。
 屋敷の北側を中心に柿の木が多く植えられ、禅寺丸(ぜんじまる)、富有(ふゆう)、渋など多くの種類があった。西側には竹林が屋敷境の垣根のように育ち、その間に樫、欅、檜(ひのき)が植えられていた。欅は南側にも数本独立して立ち大きく育っていた。家によっては改築の際、この欅を伐って大黒柱に使うこともなされた。
 水は井戸を掘り、汲み上げていた。水脈の関係でボーリングすると自噴する場合もあった。用水にはいつもきれいな水が流れ、砂の中に蜆(しじみ)貝も生息していたが飲用には使わず、汚れものの洗濯に使う程度だった。排水は風呂水などは前の川に流し、流しの水は畑に流れるように引いて自然に土中に吸い込ませていた。