材料はフチマキ、タテジノ、ヨコマワシ、シリカガリのシン用にそれぞれ異なる太さの篠竹を伐ってくる。フチマキ用は直径二〇ミリメートル以上、タテジノ用は一〇ミリメートル程度、ヨコマワシ用は直径一二~一三ミリメートルほど、シリカガリのシン用は直径五~六ミリメートルほど(それぞれ根元近くの直径)のものを伐ってくる。
タテジノはシキを作る篠で、出来るだけ長く伐ったものからジョウメズ用ではオヤのシキの長さ五八・二センチメートルのものが二本、長さ五一センチメートルのコのシキ一本が取れるくらいだった。これを三くるめ取れるといった。
取ってきた篠はまず押し切りで必要な長さに切り、その切ったものをすべて四つ割りにする。この必要な長さに切ることをクルメルといった。四つ割りにするときは芽の生えたところの真ん中を割るようにしないと最後までうまくヘネにすることが出来なかった。うまく芽を通して割れないことをメッチョといった。四つ割りにして二、三日日陰に置いておき、次にこの中央部分を皮を剥くようにとり、ヘネとする。二、三日日陰に置いておいて少し乾燥させることをネダマセルといった。このヘネの状態にすると長くもたせることができる。
篠の伐り時は十二月から二月半ばだった。伐り場所は地元の落合を中心にした山だったが、とうてい足りないので由木の篠を扱う問屋へリヤカーを引いて買いに行った。そこには津久井(神奈川県津久井郡)、黒川(同県川崎市麻生区)、真光寺(町田市)からの篠が集まってきていた。篠は約二〇センチメートル程の束が一把となっていた。篠が入ったという情報が入ると篠買いに出かけた。一度にタテジノ用を三把、フチマキ用を一把、ヨコマワシ用を一把くらい買ったという。
また、家によっては山の持ち主と契約して篠を伐る人もあったし、また雨の夜に人の持ち山に盗み伐りをしに行く人もいた。それを知る山の持ち主でずるい人もいて、盗み伐りに来て一通り伐って束にしたころを見計らって姿を現したり、物音を立てて伐りに来た人を追い出し、できあがった束をちゃっかり持って行くようなこともあった。