オオヒラ(大平)とは雑な物という意味でザクモノとも呼ばれた作りの荒い笊(ざる)である。オオヒラメズとも呼び、ヒラメズとは平たい目詰みの笊の略である。用途は日常の台所仕事用で、味噌汁の実にする野菜を洗うことなどに使用した。魚屋や八百屋がお客さんへのお歳暮やお年玉に使った。直径が八寸(二四センチメートル)で、六〇枚を一つの縄で束ねヒトッコレとした。
チュウヒラ(中平)はオオヒラと同じ形で直径が七寸(二一センチメートル)と少し小さい笊である。チュウヒラメズとも呼ばれた。
ヒラダイ(平台)には直径の違いによって九寸から一尺五寸の大きさのものがあった。単にヒラとも呼び、これに直径の寸法を頭に付けて九寸ヒラ等と呼んでいた。ヒトッコレを単位として束ねた。特定の用途ははっきりせず家庭用の多用途の笊だった。その名称は底に台を編み付けた平台付笊の意味なのか、話としてだけ残っている。
ジョウメズ(上目詰)は先にも少し触れたように大きさが大中小の三組でそれぞれオヤ、ナカ、コと呼んだ。上物でヘネの幅を細く、厚さも薄くへいで作る。目が細かく上品である。家庭の台所用として用いられ、また、料理屋で少量のうどんを客に出すのに使われた。これでうどんを茹(ゆ)でても目からうどんが抜け出ることはない。形は高さ一に対して直径三の割合で、名前の意味は上物目詰み平笊の略である。
写真3-9 ジョウメズ3つ組
コバシラ(小柱)は上物でジョウメズを深くした形のものである。コバシラは海沿いの地方に送られて貝のむき身を洗うために使われた。また、料理屋などで貝洗いに使う。大中小と三つの組だが、笊が全体に小さいからコといい、平笊より高さの割が高いから、柱と呼ぶ。骨幅も細く、築地ではフリザル(振り笊)ともいった。
ジョウボシ(上星)は大きな直径一尺くらいの平笊で、高さも四寸と高い。中に里芋や野菜を入れて洗うなど使い方も激しいので、補強のため力骨、尻カガリ、中カガリをする。材料も多く使い手間もかかるから、単価は高い。ホシ(星)と呼ぶのは目の粗いことを示すとされる。
チュウボシ(中星)はコバシラより目の荒いものでオヤ、ナカ、コの三組。作り方用途はジョウボシに同じ。ジョウボシより幾分小さい。
ムキミ(剥き身)は東京の大森や神奈川県の川崎市・横浜市などの魚屋が貝の剥(む)き身を振い洗うのに使った。直径一尺から一尺四寸位で、目が粗い。笊の内側に竹の肉が出ているので、ざらざらとしており、剥き身の汚れがとれる。築地でははんぺんを入れる用途にも使われたという。名称は剥き身篩の略である。
ウドンザルはうどんを茹でるときに使う。この笊の中にうどんを入れそのまま釜にいれるために釜の深さに合わせて深めに作る。縁は釜の縁にかかる大きさに合わせて作る。茹で上がったうどんを釜からすくいだすのに用いるものはテスクイ(手掬)と呼ばれたが、多摩市域では作られなかった。
ヌカフルイ(糖篩)は養蚕の時、蚕座(こざ)に焼いた籾殻の粉を篩い播きするのに使う。お蚕が乾くといけないので籾糠(もみぬか)をこれに入れ、ふるいながらお蚕の上にかけるのである。やはり表皮を内側にして編んだ。直径九寸×高さ四寸位で、目の細かい深笊の篩。養蚕地帯である、埼玉県川越や熊谷の近郊農村に出荷された。
メフルイ(目篩)・クワフルイ(桑篩)は養蚕の時細かく切った桑の葉を与えるためのものである。まだ蚕が小さいとき、体長に合った切り桑を与えるために使う給桑用の篩(ふるい)。多くのメケエは表皮を外側にして編むが、メフルイは内側にして編む。目の大きさも一分、三分、五分、八分、一寸と二~三分上がりで粗密があり、五種と七種のものの組み合わせがあった。
スクイは繭から絹糸をとるとき湯の入った鍋の中から繭をすくうのに用いた。直径五寸高さ一・五寸位の小笊。一笊に一〇粒の繭が入る。名称はマユスクイの略である。
シキザル(敷笊)はヨコマワシをフタマワリくらいでとめ、フチマキもせずタテッペネを長くそのままの状態に残したものをいう。料理屋で魚の形を崩さないように煮るには、この敷笊を大鍋に敷き入れて魚を煮上げる。長い骨は熱い湯気から取り出すに良い取手となる。シキザルを作るには二尺三寸くらいのタテッペネが必要で、材料がほかの目籠と比べて多く必要なため多摩市内では作らず、八王子で多く作っていた。形は底が九~一〇寸、骨の長さが一五寸ほど。名称は鍋敷笊の省略で別名ニアゲ(煮物上げ笊)ともいう。
チャシキ(茶敷)は製茶の時、青葉を蒸す甑(こしき)の底材となるものでコシキとも呼ぶ。茶産地の篩屋は、地元で檜(ひのき)の曲物の側を作り、熱に強い篠竹のシキ(底編み)だけを南多摩からとりよせ、一つの甑に作った。これを作るときは一寸四本といい幅一寸のところへヘネが四本入るように編んだ。
ウチワイレ・ウチワオキは関戸地区に住む人が考案し昭和三十年ころ専売特許を受けたもので、団扇(うちわ)を入れておくものである。
コダマ(小玉)は直径二~三寸、深さ二寸くらいの深い小笊。料理屋では、口取りの食物を小出しするときに使う。蕎麦(そば)屋では薬味でも入れたようである。径と高さの割合が同じくらいなので玉(たま)とよぶ。
ザルとは八王子や神奈川の農家に出した普通のメカイ笊のことである。直径一尺くらいで、野菜の水切りなど台所用である。
シャクロクスンは直径一尺六寸の大きなヒラダイ笊で、高さは五寸くらいである。東京の魚河岸専用に作られた。
オオメカイは四升の容量をもつ大きな籠で東京や横浜方面の八百屋用に作られた。
図3-17 メケエ一覧(『雑木林と人々のくらし』より)