〈掃き立て〉

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春蚕の蚕の種紙は、四月二十日ころに届き、五月五日前後に掃き立てとなる。初秋は七月二十日ころ晩秋は八月二十日ころ、晩晩秋は九月二十日ころが掃き立てであった。エビラに蚕座紙を敷き、その上に種紙で催青(さいせい)した稚蚕を、鳥の羽根箒(ほうき)で掃き落とす。この時の桑は枝先の柔らかい新芽を摘んで来て、桑切り包丁で細かく刻んで与える。桑の葉を摘むには、指に桑摘み用の鉄の爪を付け、摘んだ葉は桑摘みビクに入れて背負って来た。稚蚕をコバあるいはケゴと呼び、コバ育ては一家の主婦の仕事であった。コバ育てのときは、まだ蚕棚の使用は一段であり、成長に合わせてエビラを分けて使う棚数を増やしていく。