大麦の刈り取りは五月末から六月上旬、小麦は少し遅れて六月中ころであった。湿田であれば早くから田をこなして(耕して)、クロ(畔)をつけることができるが、二毛作の乾田では畑のようになっているところへ水を一度に入れて荒ごなしをし、クロ塗りをしてから代掻きをしたのであった。
二毛作の田で、小麦を作った後は注意して田へ入らなければならなかった。小麦の茎は堅く、田へは裸足で入るので、踏んで刺さると夜になって足が火照(ほて)ってどうしようもないものだという。そうしたこともあり、なるべく小麦は作らぬようにしたが、小麦を作った場合は刈り取りに注意した。鎌で斜めに刈ると堅い茎が尖(とが)って危ないので、なるべく平らに刈ることを心がけた。慣れぬ者が、斜めに刈ると、しかられたものである。
二毛作では麦刈りを待って田起こしが始まるので、麦刈りが遅れるとまわりの田へ水が入っているなかで刈ることになる。そして、麦刈りの後に根を扱かずに、水を入れてから牛馬で起こした。