図3-33 ウナギド
また、中洲の狭い流れの上下を砂利で塞き止め、瀬を干して魚を取る瀬干し漁でもドが使われた。まず流れの下流側を塞き止めるように石を並べ、一~二本のドを仕掛ける。このドは長さ二尺五寸~三尺・口径七寸~一尺ほどでセボシド(瀬干しド)と呼ばれる。次に上流側にジョレンで砂利を掻き寄せ土手を作り塞き止める。中洲の上下で塞き止められた間は溜まりとなるが、間もなく水は引いて行く。その引く水と共に魚も下りドに入る。そのため様々な魚が取れた。流れを塞き止め、流れを変えるので瀬回しとも呼ばれていた。瀬干しをするのに都合の良い中洲ができた時に行ったもので、特に季節は決まっていなかった。
図3-34 ドジョウド
図3-35 セボシド
なお、この時のセボシドは、瀬干し以外での使用方もあった。多摩川の瀬に掛けてハヤを取るのにも使う。クキバと同様に砂利を寄せて流れを細くし、ドの口を下流に向けて仕掛けておくと、遡上するハヤが多く入った。このセボシドは川に掛けたままにしておくが、取られる心配もある。そこで、砂利掘をしながら近くに掛けておき、時折見にいっていた。他にも田の畦へ掛けて鮒を取るのにも使われた。特に秋の大水が出た時には田へ鮒・鯰・鯉などが入り込むので、その水が引く時に田の尻へセボシドを掛けて、それらを捕らえたものである。
筒状のドの他に天王ドと呼ばれる箱形のドもあった。夏場に仕掛けておくと、ハヤ・鯰・ゲバチなど何でも入ったという。箱型のドは自家製で、おおよその大きさは間口の幅二尺・高さ五寸で、底の長さは三尺ほどである。上下と両側は板を張り、コシタは長さ七~八寸の割竹を並べて間口の上から内側へ斜めに下げておく。ドの尻は傾斜が付けられており、魚が逃げぬ程度の隙間を開けて細い板を簀の子(すのこ)状に張ってある。流れの中央からそれて緩い流れのところへこの天王ドの口を下流に向けて沈め、浮かぬように石を載せておく。中に蚕の蛹(さなぎ)と田螺(たにし)を潰し土とこねた団子を餌に入れて仕掛けておいた。