ドで取るほか、鰻の穴釣りもあった。二尺ほどの紐を付けた鰻針を、一尺から一尺五寸の細い篠竹の先に掛け、餌にミミズを付けて蛇籠の隙間や穴へ差し込む。鰻が食いつくと鰻針は篠竹から外れるようになっており、紐を手繰って鰻を取り込む。鰻が暴れて蛇籠の隙間で丸まってしまうと、取り込みにくくなるので、うまく引き出すのがコツであった。鰻が目的であったが、蛇籠に潜む鯰も釣れることがあった。
また、夏場に鯰・鰻・ゲバチなどを釣る流し針を多摩川に仕掛けた。これには流し針と長縄流し針があった。流し針は一尺五寸ほどの麻糸に針を付け、一尺ほどの棒に付けて川の流れに立てておき、魚が食いつくのを待つ漁法であった。農家の自家用に取るもので、夕刻にミミズを餌に付けた流し針を五~六本用意し、浅瀬で流れのあるところへ立てておき翌朝上げに行く。長縄流し針はいわゆる延縄(はえなわ)漁である。長さ二~三間の木綿の幹糸の両端に石を縛り付け、間に二~三尺おきに針を付けた枝糸を出す。針は流し針用の針がありミミズを餌に付けた。夕刻に川の流れを横断するように長縄の片方の石を投げて仕掛け、翌朝上げに行く。いずれも大きなものが掛かるのが楽しみであった。