棟まで仕上がるとお祓いをする。棟近くに幣束を立て、海のものと山のものをそれぞれ三品か五品か七品供え、屋根屋が口上を述べてお祓いをする。屋根に上がるのは親方だけである。終わると供物は屋根屋が持って帰る。これでその日の仕事は終わりで、次の日に上から刈り込みしたのち足場となる竹をはずしていき下まで仕上げていく。
幣束は屋根屋の親方が自ら切った。大工が行う棟上げの時の幣束と違い、「屋根屋は剣に切る、大工は四つに切る」といって幣束の切り方が違った。屋根屋の作る幣束は和紙の中判を用いて、二つ折りにし屋根屋の使うはさみの先で指二本分を定規にして切っていく。二尺五寸の竹を用意し、先を腰鉈(なた)で剣に切り、間に割れ目を入れて、船、ご神体の順に差し込んでいく。先に作った幣束がご神体であり、これを船に乗せるという形になっている。船の下には和紙を竹に巻き、着物を着せるという。着物とご神体を差し込んだ割れ目を水引で縛る。着物の下に台座となる和紙を付けてこれを屋根に突き立てる。屋根葺きの終り頃になると建て主が幣束を切ってくれと頼みにくる。そうするとあわせて海のもの山のものを三~五品供えるように指示した。ここで山のものと言うのは鏡餅、白米一升三合、人参、牛蒡(ごぼう)などで、海のものは昆布、お頭付の魚などであった。