間口二間・奥行き三間ほどの麹室を二棟使用していた。土壁が二〇センチメートルほどの厚さの土蔵で、真ん中に囲炉裏(いろり)が設けられていた。その囲炉裏に釜をかけ、蒸気を上げて麹室を暖める。湿度と温度がなければ、カラカラになって麹菌は働かなくなるので、冷めぬうちに仕事を始めた。湿度と温度を保つために、仕事を始めると連続で仕事を続け、休むとなれば半月ほど休むことを繰り返していた。
麹室は仕込んでいる間は蒸気が充満し続け、かなり土壁も湿気てくる。長期間その状態が続くと雑菌が繁殖しやすいので、一か月ほど使うと、雑菌の繁殖を押さえるために麹室を休ませるのであった。麹室を休ませるとは、戸や窓を全て開け放ち、麹室を乾燥させることである。雑菌の繁殖や熱の掛けすぎでの失敗も時にはあったという。そうした失敗を避けるために、二棟の麹室を交互に使用したのであった。