場所は桜ヶ丘保養院のそばで、五間×一〇間ほどの広さで深さが三尺ほどの池を作り、その中に水を入れて製氷した。この大きさの池が三つあったという。水は川の水を利用した。寒い時分には一晩で一〇センチメートルの厚さにもなったという。
切り出しは一尺五寸角に鋸(のこ)で切って引き上げた。保管は倉庫の中へ木屑で氷を覆いながら詰めていったが、夏になると溶けて半分くらいの量になった。
氷の注文の多い時期は八月のお盆ころで主に府中(現府中市)の氷問屋に出した。氷の運搬は薦(こも)に包むくらいで丁寧にはしなかった。普通は手車で運んだが、多いときは馬力を頼んだ。
写真3-36 多摩氷商会半纏(前)
写真3-37 多摩氷商会半纏(後)