四月には養蚕を始める前に大掃除をした。五月には、茶を摘み、自分の家で蒸してホイロにかけ、製茶をした。菜種は業者に持っていって油を絞ってもらった。
春は、貯蔵しておいたさつま芋、じゃが芋が次第に底をつく。里芋の種芋の残りは大釜で皮つきのまま茹(ゆ)で、間食に食べた。フダンソウや莢(さや)えんどう、そらまめなどの野菜や田の畦(あぜ)の芹(せり)などが採れ始めるので、味噌汁の実にしたり、じゃが芋と煮付けたりして食べた。
田植えのころはとくに忙しく、人を頼むこともあるので、田植え前に身欠き鰊(にしん)やカイノヒモ、昆布などの乾物を買って煮物を作った。カイノヒモは、帆立貝のヒモの部分を干したものであって、安価な上によいだし汁が出た。歳暮にもらった塩鮭も、この時期に食べた。干し餅もこの時期にアラレやカキモチにして食べた。また、衣生活関係では笠やショイタなどを購入して梅雨にそなえておいた。
梅が実ると、塩で漬け、土用のころに干して梅干しにした。らっきょうは、焼酎(しょうちゅう)瓶に漬け、土間に転がしておくと味がよくなるといった。
八月の盆が終わると、虫干しのために衣類を出して風を通した。
夏には茄子(なす)、胡瓜(きゅうり)、ジュウロク(十六ささげ)、南瓜(かぼちゃ)、瓜(うり)などが収穫できるので、漬物や煮物、味噌汁にして食べた。ジュウロクの煮付けや茄子の油味噌が毎回のように食卓に出た。冬のタクアンはすでに食べ切っており、この時期は糠(ぬか)漬けや一夜漬けを食べた。麦の収穫が終わると、オバクやコガシを食べたという。