乳幼児の服装

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大正のころの出産は、家族や近所の人などの経験者に手伝ってもらって自宅で行われた。嬰児(えいじ)は産湯をつかうとすぐに、母親の腰巻きにくるまれた。嬰児の腕が動かないように、胸の前に組ませ、腰巻きにくるんでから麻の葉の模様の着物を着せた。出産後、一一日目に、嬰児の頭髪と眉(まゆ)を剃(そ)り、頭に真綿(まわた)の帽子をかぶせた。この帽子は、真綿の縁を布でくるんだもので、この後も外出するときや寒いときなどにかぶせた。
 男児は、生後三〇日目か三一日目、女児は三三日目をオビアケといい、お宮参りに行く。このときに、母親の実家から熨斗目(のしめ)の着物が贈られ、子どもにこの着物を着せてお宮参りに行った。熨斗目の着物は、男女それぞれ初めての子どもに贈られ、次男次女以下のときには贈らなかった。
 熨斗目の着物は、お宮参りの晴れ着であり、ふだんは、オムツをあて、着物を短くまくって着せた。オムツは浴衣(ゆかた)などの古いものを縫い直したものであった。夏は、腹掛けに晒(さらし)のジュバン、冬は縞や絣(かすり)の着物が多かった。

図4-7 幼児の衣料