自分で作る履物

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農作業や川漁をはじめ、もっとも多く使われたのが、草履とアシナカであった。昭和初期まで、子どもが学校へ行くときにも藁草履を履くことが多かった。
 草履もアシナカも足をのせる台の部分に鼻緒をつけ、鼻緒を足指ではさむ形のものである。アシナカは台の部分の芯になっている縄を引き出して鼻緒にするのに対し、草履は、別に鼻緒を作って台の裏からつけている。また、アシナカは、草履よりも小型であって、台の部分が、足の半分くらいの大きさであり、また、台の先端部に鼻緒がくるので爪先は台から出ている。つまり、足全体を覆うのではなく、爪先とかかとは直接地面につくようになっている。この結果、足の指が地面をつかみ、かかとで支えることができるので、歩きやすく、水にぬれてもすべりにくい。また、小型なので、藁の量も少なくてすみ、作る時間も少なくてすむ。このような利点のあるアシナカは、田畑の仕事や川での作業などに多く使われていた。
 アシナカは、ミチシバで作ることもあったが、おもに稲藁で作られ、草履は、藁草履のほかに、孟宗(もうそう)竹の皮のタケカワ草履やミチシバ草履などがあった。タケカワ草履は、藁縄の芯に孟宗竹の皮を横に入れて作ったものであり、足に当たる部分が藁草履よりもなめらかであった。屋内の土間で履いたり、学校の上履きに用いられた。ミチシバは菅の一種であり、夏になると野原や道端に生える。夏に刈り取って陰干しして草履にすると色もきれいで、冷んやりとした履き心地だったという。
 草鞋は、台の部分に左右二つずつのチとよばれる紐を通す輪がつけられ、その紐で足首に括りつけて履く。藁草履やアシナカが裸足で履いたのに対し、草鞋はコハゼが五つまたは七つついているオカタビを履く。日常履くものではなく、山仕事や遠方へ出かけるときに履いた。
 履物ばかりではなく、藁細工に用いる藁は、粳(うるち)ではなく糯(もち)藁がよかった。糯の方が強くてしなやかなので細工に適していた。また、藁の丈が長い方がよいので、稲刈りが機械化されるようになってからも、手で刈った方がよいといわれた。
 藁細工に使う藁は、ボッチにして干しておく。使う分の藁を扇形にひろげ、藁の下葉や屑を取る。このときにはクマデなどを使うこともある。この藁に水をかけ湿らせてから槌(つち)で叩く。かつての生活では、履物作りは冬の農閑期のよなべ仕事であって、土間に置いてある藁打ち石の上で藁打ちをしたものだという。

写真4-26 藁を打つ