雨よけと日よけ

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農作業のときに雨よけや日よけのため被ったものに、笠がある。多摩市域で使われた笠には、ヒノキダマや菅笠があった。自分の家で作ったものではなく、専門の職人が作ったものを購入した。ヒノキダマは檜(ひのき)を薄く削った板を網代に組んだ笠である。菅笠は、菅を円錐形に縫ったものである。どちらも笠の内側に台輪をつけ、台輪から耳にかける紐が下がっている。昭和十年代になると、麦藁帽子が普及しはじめ、ヒノキダマや菅笠は次第に使われなくなった。

写真4-30 蓑笠をつけて農作業(昭和20年代)

 雨や直射日光から身体を守るために、笠とともに用いられたのが、蓑やショイタであった。ショイタはキゴザともいう。
 蓑は、雨や雪のときに身につけた。稲藁や菅、シュロなどでできており、明治二十年代生まれの人までは自分で作ったというが、製作がむずかしいこともあって、購入することが多かったようである。

写真4-31 蓑

 雨よけや日よけに多く使われたのが、ショイタであった。これは、キゴザともよぶように、茣蓙(ござ)に切り込みを入れて紐で結び、背中を覆うものである。防水性を高めるために、内側に油紙が縫い付けてあった。のちに、油紙のかわりにビニールをつけたものが売られた。ビニールになってからは、内側ではなく、ショイタの外側につけるようになった。ショイタは背中しか覆うことができないが、前かがみになることが多い農作業には適していた。動きやすく、着ていても涼しいので、蒸し暑い夏には重宝したという。戦後、ふだんの生活でレインコートが定着してからも、夏の田畑にはショイタで働く姿が多く見られた。

図4-14 ショイタ

 また、夏の暑いときには、直射日光をさけるために、背中に楢などの木の枝を背負って働くこともあった。帯に枝をはさんで日陰を作ったのだという。