現在は、台所とかダイニングキッチンで、飲み水の管理から煮炊きや片付け、場合によっては食物の貯蔵までのすべてが行われている。しかし、かつての多摩市域にみられた家屋では、屋外の井戸から水瓶に水を満たし、土間にもうけられた竈(かまど)で飯を炊き、炉で味噌汁を作るという暮らしであった。調理の道具も、竈や炉で使うのに適した羽釜、鉄鍋、ホウロクがおもに使われていたが、燃料がガスや電気に変わったことにより、これらの道具も家庭から姿を消すことになった。写真4-34、図4-15は、昭和五十一年のある家の台所である。この家は、その後、多摩ニュータウン開発のために取り壊された。電気釜やロースターなどの電気製品が、竃や移動式竃と併用されていることがわかる。
写真4-34 昭和51年ごろの台所
図4-15 上の写真の説明