竈での調理

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竈は、煮炊きをするための設備であって、図4-16のように薪を入れる焚き口と釜をのせる口がつき、後に、空気を流通させるための穴があいている。戦前は、山の土にツタとよぶ藁を刻んだものを混ぜて自分で作っていた。ダイドコロとよばれる土間に作りつけになっており、日常の食事の準備に使う竈はヘッツイとかカマドとよばれ、二口または一口の竈であった。二口の竈では、釜をのせる口は大小になっていて、大きい口には五升釜や三升釜がのり、小さい口には一升釜がのるようになっていた。釜の口が合わないときには、調整用の金物の輪をのせて使った。

図4-16 竈の作り方


写真4-35 煙突のついた竈


写真4-36 自在鉤がついた竈と七厘(昭和51年)

 また、家によっては、大釜用の大竃を別に作ってあることもあった。これは、餅つきのときに糯米を蒸かしたり、味噌作りのときに大豆を煮たりするのに使った。大竈は主屋の裏など戸外に作ることもあった。
 また、戦後は、持ち運びができる徳用竈が普及した。ガスや電気が普及し、家が新改築されてからは、作りつけのヘッツイは姿を消したが、現在でも、糯米を蒸かしたりするときには金属製の竈を庭先に出して使う家もみられる(写真4-37)。

写真4-37 移動式の簡易竈

 日常、竈で用いたものが釜であり、釜の中央部についている羽が竈の口をふさぐので、熱効率が高まり、煤が飛び散らない。飯を炊いたり大量の湯を沸かすときに使うが、ほかに、蒸籠と組み合わせて蒸し物にも用いた。蒸籠よりも手軽な方法としては、シキとよばれる竹と組み合わせてさつま芋を蒸かすこともあった(図4-17)。