うどんを作るのに用意した粉は、一人二合が目安であった。木鉢に粉を入れて水で練るが、一度に二升から三升くらいの粉を練ることができた。粉は木鉢の中央に山のように盛り、真ん中をくぼませて水を加える。粉がまとまると踏み茣蓙(ござ)に包んで足で踏んだ。この茣蓙は、うどんや蕎麦専用に用意してあるもので、茅で織ったものが多かった。よく踏んだ方がこしが強いおいしいうどんになるといった。よく踏んでからのし板にあけ、めん棒で四角になるようにのばし、たたんで、蕎麦切り包丁で細く切った。ふだんの夕食の用意ならば、家族の人数分だけ作るが、準備にかける時間は少なく、粉を用意してから包丁で切るまで三〇分程度ですんだ。晴れの日のご馳走で作るときには、粉も家族分より多く作り、またよく踏んでから作るので、ふだんよりは時間をかけて作った。
竈には大釜をかけ、たっぷり湯を沸かしてうどんを茹でた。茹であがるとソバスクイですくって水でよく洗い、ソバアゲザルにひとつかみずつ玉にしてならべておく。
昭和二十年代になると製麺機が普及し、のし板でのばして切る部分を製麺機によって代行するようになった。製麺機には、こねた粉を棒状にまとめて入れ、ハンドルを回して細長い帯状にする。これを三回くらい繰り返すとなめらかな生地になるので、次に製麺機のネジを調整し、麺状に切る。
写真4-50 製麺機でうどん作り
写真4-51 製麺機
写真4-52 うどん作り
1うどん作りの道具
①メカイ ②桶 ③ソバスクイ ④ソバアゲザル ⑤柄杓
⑥のし板 ⑦包丁 ⑧めん棒 ⑨茣蓙 ⑩ふきん ⑪木鉢
2うどんのカテ
(ほうれんそう・茄子・葱・油揚げ)
3粉(5~6人分)
4粉をこねる
粉の真ん中をくぼませて、まとまる程度の水を加える。
5うどんを踏む
茣蓙でくるんで踏む。よく踏むとこしの強いうどんになる。
6のし板いっぱいになるくらいまで薄くのばす。
7たたんで端から切っていく。十分にこねてあるので途中で切れることはない。
8大釜でゆで、ゆで上がったものは水にさらす。
9でき上がったうどん。
うどんは、醤油でつけ汁を作り、茹でた茄子やジュウロク、青菜などを添えた。添えた野菜をカテという。食べるときには、飯茶碗につけ汁を入れ、カテを入れ、うどんをつけて食べた。つけ汁の作り方は家ごとに異なり、玉葱や茄子、茸などを油でいためて醤油で味をつけた汁を作ることもあった。
うどんを茹でないで、味をつけた汁の中に入れて煮込んだものはニコミといい、冬の夕食に食べた。夕食にご飯が足りないようなときにニコミにすることが多かった。冬は、野菜が少ないが、大根を千六本に切ったものや干葉(ひば)(大根の葉を干したもの)を入れた。昔の一口話に、うどんを茹でるときに大根を刻んだものを一緒に茹で、笊にあげたところ、うどんよりも大根の方が多かったという話もある。
うどん粉に蕎麦の粉を加えてうどんと同じように作ると、蕎麦になる。