部屋の利用

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土間から居室部分に上がる所には小さな段が設けられており、ここをコエンもしくはアガリハナという。来客があっても立話で用件がすむ場合には、ここに座蒲団などを敷いて話をすませた。

写真4-62 アガリハナ

 一般的な家の間取りは、トンボグチ(入り口)と同じ方角(多くは南面)である表側に二室、裏側に二室を配置した四間取り型(田の字型)が多かった。なかには六間取り型の大きな家もあった。
 図4-22にしたがって部屋の一般的名称を述べれば、④はザシキまたはヒロマと呼ばれ、⑤はデイもしくはオクであった。⑥もオクと呼ばれることもあるが、多くはヘヤとかナンドである。オクと呼ばれるのは、ここに床の間が設けられ、接客用とされている場合が多かった。ザシキ(ヒロマ)の裏側にあたる⑦はカッテもしくはチャノマと呼ばれ、まれにここをヘヤという例もある。
 だいたい表側の④・⑤が接客用の空間で、④と⑤の境の鴨居の上に神棚が祀られ、⑤の正面に床の間が設けられた。結婚式や葬式には④と⑤の間仕切りの襖や板戸がはずされ、この二間が式場にあてられた。不祝儀の際に棺はデイ(⑤)の縁側から出した。なお、⑥に床の間を設けてここをオクと呼ぶ場合には、⑤・⑥が接客用に開放された。一方、裏側(多くの場合、北側)の⑥・⑦は家人用の私的空間で、⑥は主人夫婦の寝室にあてられているケースが多かった。⑦は食事をしたり家人が団欒する部屋で、ここに囲炉裏もしくは掘り炬燵の切られていることが多い。