常設の神棚には、ごく普通に神棚と呼ばれているものと、エビス・大黒、荒神などの棚がある。普通に呼ばれている神棚は、ザシキに祀られており、多くはザシキとデイ(オク)の境(ザシキとカッテの境の家もある)の鴨居の上に部厚い横板が置かれ、その上に据えられている。神棚の中には天照大神の神札が祀られ(そのためにこの神棚は大神宮の棚とも呼ばれる)、このほかにも氏神の神札や家人が参拝して受けてきた各地のいろいろな神社の神札が祀られている。エビス・大黒は木の小さな神像で、カッテ(チャノマ)の戸棚の中や上に祀る家が多いが、ザシキの神棚(大神宮の棚)の横に合祀してある例も少なくない。荒神(三宝荒神(さんぽうこうじん))は火伏せの神で、オカマサマとも呼ばれ、土間の竈(かまど)の近くの柱に小さな棚を設けて祀られている。そのため、この柱は荒神柱と名づけられている。
写真4-63 神棚と仏壇
写真4-64 ザシキの床の間
仏壇を置く部屋は家によってさまざまであるが、概してカッテが多い。
正月の年神棚は、ザシキの普通の神棚の隣に天井から吊り下げ、そこに年神の幣束を祀って供物をする例や、わざわざ天井から吊り下げたりせずに、普通の神棚の横にそのまま年神の幣束を祀る例、デイ(オク)の床の間に祀る例など、家によっていくらか異なっている。いずれにしても、この年神は暮の三十日ごろに祀る準備をし、正月三日間とか新年の初卯の日まで祀っている。
盆棚はザシキに設ける例が多いが、仏壇の前に作る家もある。かつての盆棚は、四斗樽の上に戸板などを置いて新しい茣蓙を敷き、そこに位牌を祀り、位牌の前に茄子(なす)・胡瓜(きゅうり)で作った馬を並べ、いろいろな供物をしていた。盆棚の四隅には竹を立ててチガヤの縄を張り、ほおずきなどを吊していた。